いなば哲「怪談夜泣き傘」(150円)



・「怪談夜泣き傘」
「この世にたった二人の兄妹、菊之助と美鈴。
 ある日、菊之助は妹の美鈴のためにかんざしを買って帰る。
 その途中、旗本の父を笠に着た池田九太郎とその取り巻きにからかわれ、しかも、かんざしを踏みにじられてしまう。
 激怒した菊之助は九太郎をぶん殴って、逃走。
 九太郎は仕返しに菊之助の命を付け狙い、菊之助の家の近くで待ち伏せる。
 しかし、再びかんざしを買いに行った菊之助はなかなか戻らず、そのうちに雨が降り始める。
 そこへ、兄を迎えに行こうと、傘を手にした美鈴が表に出てくる。
 憎い奴の妹だからと、九太郎達は美鈴を取り囲み、嫌がらせをする。
 美鈴は逃げ出すが、逆上した九太郎により斬殺。
 九太郎達は、人目のないのを幸い、美鈴の死体を川に流すのだった。
 帰宅した菊之助は美鈴が失踪したことに心を痛め、気がふれる。
 そして、晴れ間なのに傘を差し、頭にかんざしをつけ、町をさまようになる。
 その傘は、雨が降っているわけでもないのに、水が滴り、菊之助は美鈴が泣いていると嘆くのだった…」

・「蜘蛛女」
「大川家の土蔵に棲みついている、一匹の蜘蛛。
 蜘蛛は大川家の一人息子、橋之助に恋をしていた。
 蜘蛛の願いが通じたのか、蜘蛛は美しい娘の姿となる。
 橋之助と出会った蜘蛛はお絹と名乗り、橋之助の側に置いてくれるよう願う。
 橋之助はお絹の美しさに打たれ、両親にお絹を家においてくれるよう頼むが、両親は頑として聞き入れない。
 自分のことで橋之助が苦しむ様を見て、お絹は再び蜘蛛へと姿を戻す。
 が、お絹のことが忘れられない橋之助は、お絹を探し求めて、憔悴していく。
 これを見た両親は、ひとまずお絹を屋敷に引き取り、様子を見ることに決め、橋之助にその話をする。
 同じ話を聞いた蜘蛛は、お絹として再び橋之助の前に姿を現すのだが…」
「怪奇談@」(貸本/セントラル文庫)にてリメイクされております。(お気に入りだったのでしょうか?)
 お絹さんの蜘蛛の巣柄の着物がステキです。
 さがみゆき先生の「悪女の血が凍る」(貸本/ひばり書房)にも蜘蛛の巣柄の着物の描写がありますので、興味のある方はどうぞ。
(あちらの方は、蜘蛛の巣に蝶々をくっつけるという小技が冴えてます。)

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。pp3・4、下部に大きな欠損あり。読み癖ひどし。全体的にシミ、切れ、汚れ多し。前の遊び紙に貸本店のスタンプあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり、また、貸本店のスタンプあり。

2016年3月8日 ページ作成・執筆

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