曽祢まさこ「幽霊狩り」(2000年7月13日第1刷発行)

 収録作品

・「幽霊狩り ダニエル」(「なかよし」昭和49年8月増刊号掲載)
「北イングランド、カーライルの旧家、ウッドワーズ家。
 長男のアーサーが五歳の時、父親が病死。
 その三か月後に、次男のダニエルが産まれる。
 ダニエルは産まれつき盲目であったが、人の未来を視る、不思議な力が備わっていた。
 如何なる動物もダニエルに決してなつくことはなく、村人達は「のろわれた悪魔の血」と忌み嫌う。
 母親が病死以後、ダニエルは村から離れたリーズ盲学院へと行く。
 アーサーも村を出て、寄宿制の中学校に入学し、休暇には二人、カンバーランドの別荘で過ごす。
 ダニエルはその超能力故に幾度も孤独や悲哀を味わいながらも、時は流れる。
 ダニエルが十六歳の時、大学の入学資格まで持ちながら、彼はカンバーランドの別荘に隠遁する。
 夏の休暇の際、カンバーランドの別荘に、スタンリーとクラリサのカップルが訪れる。
 彼らは、エジンバラ大学に通うアーサーの親友であり、近々、結婚する仲であった。
 だが、ダニエルはクラリサに「血のこおるような不安と絶望」を感じ、スタンリーを不幸にするとアーサーに告げる。
 九月、クラリサは交通事故で急死してしまい、スタンリーは悲嘆と絶望に暮れ、生活は荒れる一方。
 そんな彼の前に、クラリサの亡霊が現れ、彼を黄泉へと誘う。
 スタンリーの異変に気付いたアーサーはダニエルに助けを求めるのだが…」

・「幽霊狩り 魔犬シリウス」(1975年「別冊なかよし1月号」掲載)(注1)
「ある日、ダニエルは、犬の鳴き声に呼ばれ、シリウスという子犬と出会う。
 シリウスは、誘拐されて行方不明となっている、船舶王の故・コールリッジ氏の娘、ニーナの飼い犬であった。
 ダニエルは、近くの山小屋に、ニーナの射殺体と、何物かに喉を喰いちぎられた誘拐犯の死体があることを霊視する。
 ダニエルは全てを察しながらも、ダニエルにとってシリウスは初めての友人であった。
 彼はシリウスがニーナのことを忘れてくれるよう祈るが、シリウスの復讐を止めることができない。
 主人を殺され、憎悪の塊となったシリウスは誘拐犯の一味を次々と襲って、殺害。
 だが、傷つき、歯止めの効かなくなったシリウスは、リバプールを混乱に陥れることとなる…」

・「幽霊狩り マリアンヌ」(「別冊なかよし」昭和50年第3号掲載)
「別荘近くの湖で、ダニエルはマリアンヌという少女と出会う。
 彼女は、フランス人の父と共に、母方の祖母の農場に滞在していた。
 異国で半年前に病死した、彼女の母はこの地の出身であり、マリアンヌは湖の畔で母親の追憶に浸る。
 そして、彼女は湖に白いバラを流し、この湖では、彼女の母の恋人が亡くなったのだとダニエルに語る。
 その日以来、夜ごと、マリアンヌはローズマリーと呼ぶ声を聞くようになる。
 ローズマリーは彼女の母の名であり、祖母の話からマリアンヌは母にエドワードという弟がいたことを知る。
 湖からマリアンヌを呼ぶ者の正体は…?
 ダニエルはマリアンヌを救おうとするのだが…」

 なかよしコミックスの「幽霊がり」では三話のうちしか二話だけしか収められていなかったのですが、ポケット講談社コミックスにてようやく全編、一冊にまとめられました。
 「あとがき」によると、三話しかないのは、当時の作者が息切れしてしまったためとのこと。
 それもうなずけるほどの、レベルの高い内容で、シリーズ化されなかったのが惜しまれます。
 でも、作者も書いてますように「ダニエルがかわいそうすぎる」のが、この作品の肝でしょうから、下手に続けて、ダニエルがハッピーになったりしなくて良かったのかも…。

・注1
 「シリウス」という犬の名は、イギリスのSF作家、オラフ・ステープルドンの同名のSF小説(未読)からの採用?
 また、魔犬の描写は、コナン・ドイル「バスカヴィル家の犬」からインスパイアされたのでしょうか?
 余談ですが、最近、「バスカヴィル家の犬」(創元推理文庫)をようやく読みました。
 「シャーロック・ホームズ」は実は全くと言っていいほど、目を通してなく、初めてちゃんとしたものを読みました。
 普通に面白かったです。(阿部知二の訳も読みやすくて、良かった。)
 怪奇色の味付けを施したミステリーで、「怪奇」も「ミステリー/サスペンス」も大好きなのに、何でもっと早く読まなかったのか、ちびっと後悔してます。

2017年8月15日 ページ作成・執筆

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