水島順「ふりむいた不幸」(170円)
「ある冬の日、柏木春子は、通りで美しい、ハーフの少女を見かける。
その少女は、通りすがりの女性の顔を見て、驚いた顔をして立ち止まる。
その直後、通りすがりの女性は自動車事故に遭ってしまう。
現場から駆けだした少女を春子が追うと、少女は建物の廃墟に身を隠して、泣いていた。
春子が理由を聞いても、少女は訳を話そうとはせず、お互いに自己紹介をして別れる。
少女の名はメリーといった。
後日、春子の兄が医師を勤める柏木医院に、メリーが運び込まれる。
兄は、メリーは心臓麻痺を起こした少女をその家に運び込み、その死を目の当たりにして、悲鳴を上げて気絶したと話す。
意識を取り戻したメリーであったが、自分のことは決して打ち明けようとはしない。
春子はメリーが一人で悩みを抱えている様を見るに忍びず、兄の自白剤をこっそりメリーに飲ませる。
そうして話されたメリーの秘密とは、彼女は死神に憑りつかれた人を見抜くことができるというものであった。
人が死期が近い時、メリーにはその人の顔がぼやけて見えるという。
その話を聞き、恐怖に身を震わす春子を、新たな恐怖が降りかかる。
メリーから彼女の秘密を聞いた時、その能力は聞いた者にももたらされるのであった。
そして、秘密を話した人間は死んでしまうという。
春子とメリーの運命や如何に…?」
水島順先生は、詳しくは知りませんが、当時の人気作家だったのではないでしょうか。
絵は上手く、少女キャラは今現在から見ても、普通に可愛いです。(注1)
また、構成も、ストーリー(元ネタ、あるんでしょうが)もしっかりしていて、当時の貸本マンガとしては水準以上の出来と思います。
ただ、この作品には一つ謎があります。
背表紙で、作者が何故か池川伸治先生の名前になっているのです。
また、タイトル・ページも池川伸治先生の手によるものでしょう。
そして、本編後、池川伸治先生が学生時代に体験した話が紹介されております。
宏文堂では池川伸治先生は新進気鋭のヒット作家であった模様ですが、何故にここまで池川伸治尽くし?
それほど、売り込みに力を入れていたってことでしょうか?
・注1
本編の合間に、作者とアシスタントのマリ子さんというのが出てきて、少女達のファッションを描いたページがあります。
主に、少女マンガの分野で活躍したのでありましょう。
・備考
ビニールカバー貼り付け、また、それによる本体カバーの歪みが少しあり。背表紙色褪せ。前後の遊び紙、紙テープで補強。切れ、小欠損、シミ、あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年4月24日 ページ作成・執筆