岬かいり「終末の箱庭@」(2023年4月16日初版第1刷発行)(注1)
収録作品
・「1.砂嵐」
「比良坂町では奇妙なものが流行っていた。
それは「魂呼び」という昔にあった習俗で、遺品に向かい死者の名前を一心に呼ぶことで死者の魂を呼び戻す「蘇りの儀式」らしい。
真奈は母親を病気で亡くしてはいたが、そういう儀式には反発を覚える。
彼女は自分の中に母親の魂が生きていると信じていた。
そういう気丈な彼女であったが、ここ最近、夜、なかなか寝付けない。
そんな夜にはテレビのサンドストームを見つめていると、心が落ち着き、いつの間にか眠っている。
彼女がサンドストームに魅了される理由とは…?」
・「2.才の目」
「生れる前に両親がお金をかけて遺伝子改良を施し、様々な才に恵まれた『才児』。
彼らは様々な面で人より遥かに優れており、傑(すぐる/♀)もその一人であった。
ある日、彼女は小学校一年生の時の消しゴムを友人に見せる。
当時、クラスで合成消しゴムを作ることが流行しており、その消しゴムは様々な消しゴムのパッチワークであった。
突然、クラスメートの我村高志が「物騒な話…やめて すごく嫌だ……」と話しに割り込んでくる。
彼はパッチワークの消しゴムに何やら思うところがあり、嫌悪感を抱いていた。
放課後、傑は我村にその理由を教えるよう付きまとう。
我村は傑に「見た方が早い」と病院に案内し、彼の両親のカードの複製品で地下へと降りる。
そこには才児を望む大人たちが集まっているが、ここで行われていることとは…?」
・「3.世直し」
「英雄中学校のモットーは『(才児に負けないよう)死ぬほど努力できる強い精神力を育むべき』というものであった。
そのために生徒たちには徹底した管理教育を敷き、「不健全」な生徒には容赦なく「再教育」を施す。
一年生の苦野勝は学校の方針に疑問を抱くが、先生に不満を聞かれ、数人の生徒たちと再教育を受ける。
まずは轟音で説教を聞かされ、その後、炎天下の中、日没まで清掃活動をすることとなる。
勝はこんなものは恐怖政治だと思い、他の生徒たちに声を上げようと提案するも、他の生徒たちは洗脳されており、誰も聞く耳を持たない。
途方に暮れながら、勝は倉庫(?)に身を隠すと、そこに友人の茂樹が現れる…」
・「4.躾」
「小学四年生の痛崎千紗は弟が欲しい。
と言うのも、四年生のなった時、地下室が彼女の部屋になったのだが、ここは彼女一人では広くて、夜、寂しいからであった。
ある日、彼女は公園で人みたいな形の切り株を見つけ、気になって持ってみると、意外と軽く、あっさり抜ける。
彼女は切り株を家に持ち帰り、服を着せ、「キースケ」と名付ける。
だが、家の中を泥だらけにしてしまい、彼女は父親から体罰を受ける。
彼女はキースケを公園に捨てに戻るが、キースケと並んで草むらに寝転んでいると妙に落ち着く。
キースケが本当の弟だったら…と思いつつ、眠ってしまい、目覚めると、キースケがいない。
家に戻ると、家中泥だらけで両親の姿はなく、彼女の部屋にキースケがいた。
キースケは彼女の弟になろうとしていたが、キースケに彼女がしたことは…?」
・「5.ショクリン」
「のびやか町は『しあわせ認定区』に指定された平和な田舎町。
以前は郊外型犯罪の多発地域であったが、自然を増やしたことで治安が良くなり、今や「犯罪ゼロの町」であった。
しかし、新聞部部長の凜はあまりに平和すぎて、物足りない。
彼女は少しでも不穏な出来事がないかと探すが、皆、二言目には「毎日がとっても幸せ」と笑顔で言うばかり。
ある日、彼女は車の当て逃げの現場をスクープする。
彼女は警察には届けず、まず、校内新聞で発表しようとするが、それが思わぬ事態を招く。
この町が「犯罪ゼロ」の理由とは…?」
(「マンガワン」2023年10月13日配信分〜11月17日配信分)
「笑顔の世界」で話題を呼んだ岬かいり先生による「『if』の世界」をテーマにしたホラー漫画です。(帯では「予測不能のディストピアホラー」と紹介されております。)
扱われる内容は人間の果てしない欲望や全体社会、児童虐待といった現代にも通じるテーマで、ディストピアを舞台にすることにより、作者独自の奇想を活き活きと羽ばたかせております。
そして、何よりも感心したのは作者の世の中への鋭い視線です。
これのために、単なる奇想ホラーで終わらせることなく、心の底に澱の溜まるような読後感を醸し出すことに成功していると思います。
個人的には、「砂嵐」と「躾」が好みです。
特に「躾」はワケがわからないと言えば、そうなのですが、これは確かに「予測不能」…。
・注1
本当は「2024年」の発行と思うのですが、もしかして、まさかの奥付で誤植?
2024年11月15日 ページ作成・執筆