千之ナイフ「うわさの死太郎くん」(2006年5月15日初版発行)
収録作品
・「ゲルニカさん」(「サスペリア」1998年12月号)
「緒方絵理の学校で「ゲルニカさん」の噂が流れる。
「ゲルニカさん」は黒いマントに坊主頭、そして、顔はピカソの絵みたいにめちゃくちゃ。
ゲルニカさんは友達が欲しくて、色々な人に手紙を出しているが、その手紙を無視すると、呪われて顔のパーツが同じようにされてしまうという。
ある日、美術部の絵里は新聞部から「ゲルニカさん」の絵を描くよう一方的に頼まれる。
とりあえず、絵を仕上げて、新聞部に行くと、新聞部の連中の話が聞こえてくる。
実は、「ゲルニカさん」は新聞部の部長がでっちあげたもので、彼は噂の顛末をレポートにまとめるつもりであった。
だが、新聞部の連中に「ゲルニカさん」から手紙が届く。
彼らは模倣犯の仕業と決めつけ、手紙を捨ててしまうのだが…」
・「メリーさんの館」(「サスペリア」1999年1月号)
「ある町に立つ『宝くじ御殿』。
ここは10億円の宝くじに当たった家族が建てた家であったが、その宝くじは父親が死太郎くんからちょろまかしたものであった。
そして、その宝くじの本来の持ち主であった先輩後輩コンビは相変わらず貧乏で、北風に身を打たれていた。
二人は『宝くじ御殿』に住む一人息子の太郎を誘拐し、金をせしめることを思いつく。
彼らは御殿に忍び込み、子供とメイドの麻美をさらうも、この子供は太郎と一緒に遊んでいた死太郎であった。
死太郎の提案で、彼らは町はずれにある「メリーさんの館」を隠れ家にする。
ここは非常に有名なお化け屋敷で、昔、医者の一家が住んでいたらしいのだが…」
・「ヒトバカシ」(「サスペリア」2000年3月号)
「夢見は夢想がちな女子高生。
ある日、彼女は、人気アイドルの間宮が友達だとクラスメートに嘘をつく。
更に、父親は出版社の社長と嘘を塗り重ね、引っ込みがつかなくなる。
その日の下校途中、彼女は公園で奇妙な男児を目にする。
彼が土手の洞穴にほしいものを言うと、中からその通りのものが現れる。
彼女が男児に尋ねると、これは「ヒトバカシの穴」で、「穴にお願いすると言ったものが出てくる」という。
これを使い、夢見は級友に、偽物の間宮とデートしているのを見せつけて、得意顔。
調子に乗った夢見は穴に豪邸、召使、アイドル達を願い、クラスメート達をホームパーティーに招くのだが…」
・「赤いクマちゃん・冒険編」(「サスペリア」1999年3月〜4月号)
「ゴミ捨て場で死太郎はぬいぐるみのクマちゃんと再会する。
クマちゃんは持ち主の梨香を探しており、死太郎も協力を申し出る。
クマちゃんが目に付けたのは、アイドル歌手の美咲エリナで、エリナは梨香とそっくりであった。
死太郎とクマちゃんはホワイトデーに開催される東京ドーム公演に向かう。
一方、公演当日、美咲エリナは公演をすっぽかす。
実はエリナは超おデブで、ラバ―スーツを付けて誤魔化していた。
マネージャーがエリナを必死になって捜していると…」
・「赤いクマちゃん・逃亡編」(「サスペリア」2000年4月号)
「美咲エリナとして活躍することになった梨香。
彼女のボディガードはクマちゃんのぬいぐるみであった。
ある日、梨香に映画の主演女優の話が持ち上がる。
候補はもう一人いて、それはカリスマアイドル、六本木ユウ。
彼女はどうしても主演女優の座を得るために、梨香からクマちゃんのぬいぐるみを奪おうと考える。
ユウのマネージャーは盗み出すのに成功したものの、クマちゃんはユウの顔を引っ掻いて逃げ出す。
その際、ユウの「死刑よ」という言葉にショックを受け、クマちゃんの逃亡生活が始める…」
・「死霊アパート」(「サスペリア」1999年9月号)
「相変わらず景気の悪い先輩後輩コンビ。
夏のある日、極貧な後輩の鴨井に先輩が掘り出し物のアパートを教える。
そのアパートは月に五千円、敷金礼金なし、バス・トイレ付と破格の条件であった。
それもそのはず、ここでは何件も自殺の続いていたのである。
アパートの隣に住む亜子は鴨井に忠告しようと部屋を訪れるのだが…。
そして、夜、アパートの近くで虫取り網を振り回している男の子が捕まえているものとは…?」
・「ねらわれた町」(「サスペリア」2000年2月号)
「極貧な故に、テレビも持っていない鴨井。
先輩のアパートからの帰り道、彼は見知らぬ男児からテレビのある場所を教えられる。
それは三丁目の廃屋で、彼はそこからテレビを持ち帰る。
早速、アパートでテレビを観ていると、急に画像が乱れ、宇宙人が現れる。
次に映し出されたのは、二丁目のパン屋の主人が額に玉を埋め込まれ、宇宙人の手先に改造されるシーンであった。
鴨井は先輩に宇宙人の地球侵略計画について話すも、鼻で笑い飛ばされてしまう。
そうしている間にも、町内の人々は宇宙人によってロボット化されていく。
しかも、通信用に使っていたテレビがないことに気づき、宇宙人の魔手は鴨井にも伸びる…」
怪奇漫画家としても著名な千之ナイフ先生。(先生の怪奇マンガ、大好きです!!)
中でも「死太郎くん」シリーズは特に人気の高いシリーズで、誰でもどこかでこのキャラ見たこと、あるんじゃないでしょうか。
単行本は秋田書店から「死太郎くん」と「死太郎くん2」の二冊が出ておりますが、単行本未収録作を収録したのが、バーズ・コミックス・スペシャルのこの単行本と「うわさの死太郎くんリターンズ」です。(完全収録かどうかは未チェックです。)
「死太郎くん」シリーズは毎回、彼に関わった人物が怪事件に巻き込まれますが、これがどれも珍妙なものばかり。
作者が巻末解説で死太郎くんが「勝手に動いているかのよう」と言うのも納得で、死太郎くんは「狂言回し」というだけでなく、彼の「無邪気」(?)なキャラクターは「ホラー」と「コメディ」を結びつける点で非常に大きな要素となっております。
また、常連キャラの先輩と後輩の鴨井・コンビも味があって、実にいい!!
このコンビが出てくる「ねらわれた町」にはあまりのバカバカしさに腰が砕けちゃいました。
2023年3月26・28日/4月3・5日 ページ作成・執筆