古賀新一「魔女黒井ミサ2」(1983年5月15日初版・1985年12月20日再版発行)

・「第1話 笑う女」
「正巳は、母と姉達に溺愛されて育つ。
 女家族の中では王子様扱いであったが、いつしか皆が彼のことを笑っているという考えにとり憑かれる。
 中学一年の頃、同じクラスに柏木エリという少女がおり、彼女は彼のことを笑わなかった。
 彼は彼女に告白するも、こっぴどくフラれただけでなく、嘲笑され、以後、家に閉じこもりがちになる。
 人間嫌いなだけでなく、鏡に映った自分さえも恐れ、彼は美しく女装して、心の平安を得る。
 ある日、女装した彼が母親と外出すると、初恋の相手、柏木エリを見かける。
 彼女は彼のことを嘲り、高笑いしていた。
 夜、彼は彼女を拉致して、自宅に監禁する。
 乳離れしてないのが滑稽と指摘され、彼と母親は、彼女を羽毛でくすぐって責め立てるのだが…」

・「第2話 鶏を飼う女」
「景子の姉、ユリは、父親の再婚相手の連れ子であった。
 一歳しか違わないのに、ユリは全ての面で景子を上回り、大人になった頃には、家庭の主導権をすっかり握っていた。
 ある時、両親が交通事故で亡くなる。
 その葬式の時、涙一つこぼさない姉に向かって、景子は「怖いものなんてないんでしょうね」と言う。
 だが、姉には一つだけ怖いものがあった。
 それは「死」で、死後、自分の死体がどうなるか、考えるだけで恐慌を来たす。
 姉の弱点を知った妹は鶏を飼い始めるが、その目的とは…?」

・「第3話 生きている肖像画」
「掃除の最中、屋根裏部屋から出てきた絵。
 それは椅子に座って、編み物をしている女性が描かれていた。
 絵はミサの部屋に飾られるが、絵から低い男の声が聞こえてくる。
 その呻き声は、ここから出してくれ、と訴えていた。
 父親は肖像画の由来について思い出し、ミサに語る。
 この絵はルーマニアのある美術館に飾られていた。
 そして、美術館の向かい側には病院があり、吸血症の青年が閉じ込められていた。
 彼は、窓から見えるその絵を実在の人物と勘違いして、恋をするのだが…」

・「第4話 優れたウェイトレス」
「あるレストラン。
 店主の男性は、高性能のロボットを購入する。
 ロボットを上手く使ったことで、レストランは大盛況。
 数か月後にはロボットは妻のような存在となった。
 ある時、売り上げをもっと伸ばす方法を相談すると、ロボットはライバル店の放火を示唆する。
 彼はそれを実行し、売り上げは倍増。
 だが、いくら喜びを分かち合うと言っても、所詮はロボットで張り合いがない。
 彼は、酔った勢いで、ロボットにめちゃくちゃな命令をインプットするのだが…」

・「第5話 さまようミイラ」
「ある日、ミサは、テレビのゾンビ映画に出ていたミイラ(本当はゾンビなんだけど、漫画ではミイラと呼んでいる)にそっくりな男を見かける。
 彼は、魚屋で魚の目玉だけを買おうとしていた。
 翌日、ミサはその男に話しかけられ、「目玉の料理」を作ってくれる店に連れて行かれる。
 そこで、料理を御馳走になるが、その料理は魚の目玉でなく、人の眼球で、ミサは店をとび出す。
 ミサがもう一度、その店に行くと、そこは料理屋でなく、座敷に一人の老人が座っていた。
 老人はミサに、冬休みのバイトを持ち掛ける。
 「化粧」のバイトと言うのだが、その相手とは…?」

・「第6話 首と幽霊電車」
「深夜、ミサがジュースを買いに外出すると、電車が走っている。
 回送電車かと訝っていると、電車はスーッと消えてしまう。
 家に逃げ帰ると、何故かテレビが付いている。
 画面では、ギロチンにかけられた女性が助けを求めていて、斬首された後、切断された首が立って、笑う。
 翌日、クラスでこの話をすると、山田という男子生徒だけがその映像を見ていた。
 山田が女優に心当たりがあると言うので、昼休み、二人は撮影所を訪れる。
 だが、女優はその首は作り物と言い、二人に人形の首をあげる。
 その首を山田はいたずらに使い、職員室で絞られることとなる。
 ミサは人形の首が気になり、放課後の学校に戻る。
 職員室からは泣き声がしたのに、誰もおらず、ミサが逃げようとすると、階段から人形の首が転がり落ちてくる。
 それは笑い声をあげ、拾うと、切り口から血が滴っていた。
 近くに、山田が気絶しており、ミサが介抱していると、見知らぬ男が人形の首を持って走り去る。
 ミサは追うが、男の姿を見失ったところで、電車が通りがかる。
 窓辺には首のない女が立っていた。
 人形の首と幽霊電車の関係とは…?」

 ちょびっと考察
・「第1話 笑う女」→ロバート・ブロック「最後の演技」の影響あり? 「最後の演技」は、早見純先生の「のど奥深く」にも影響を与えております。。
・「第2話 鶏を飼う女」→古賀しんさく・名義「奇妙な復讐」(古賀しんさく「逆転負け」(貸本/ひばり書房)収録)のリメイク。古賀新一先生はこの話がお気に入りで、「自滅した男」(「エコエコアザラクB」収録)もあります。
・「第3話 生きている肖像画」→江戸川乱歩の名編「押絵と旅する男」が入っております。
・「第5話 さまようミイラ」→古賀新一「白い眼の少女」の要素あり。ミイラは「呪われた墓」のスチールのトレス?

2021年9月23日 ページ作成・執筆

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