古賀しんさく「逆転負け」(220円/1965年頃)
・「醜悪な顔」
「建設会社に勤める黒川はイケメンかつスタイルも抜群で、女性達にモテモテ。
ある日、ダンプを運転していた時、人を轢いてしまう。
轢いた相手は、醜い男で、黒川は彼の金を奪い、そのまま逃走する。
彼は早速、女の子とデートしようと考えるが、会う女性は皆、嫌悪に顔をしかめて、彼の前から去る。
女性達には、彼の顔が、轢き逃げした男の顔に見えているようなのだが…」
・「忘れもの」
「ある病院に急患として運ばれてきた女性。
彼女は急性盲腸ですぐに手術を受けるが、担当する医師は彼女とは深い因縁があった。
三年前、彼女は医師の家のお手伝いさんとして住み込み、医師の子供の面倒を看ていた。
ある夜、彼女は、隣家の男性から、アイロンのスイッチを切らないまま、外出するよう、依頼される。
隣家の男性は、もらい火による保険金詐欺を企んでいた。
大金に目がくらんだ彼女はその話に乗り、火事を起こすが、医師の子供は焼け死んでしまう。
彼女は、故意にその火事を起こしたとはわからないだろうと考えるのだが…」
・「黒髪」
「営業不振のかつら屋。
起死回生を狙う主人は、隣家からカラスを譲ってもらう。
そのカラスの色を研究して、彼は「理想のかつら」を開発を試みる。
半年後、理想のかつらが完成するのだが…」
・「奇妙な復讐」
「湯浅は、養鶏業を営む、貧しい青年。
彼は、金目当てに高利貸しを小山を殺す。
また、小山に用があって訪れた親友も、口封じのために、殺害。
殺人計画はうまく行き、彼は夜の町に出かける。
飲み屋で酒を飲んでいると、隣の席の男の話が耳に入る。
それは、火葬場で出た骨灰を、肥料や鶏のエサとして売っているという話であった。
彼は、鶏のエサを売りに来る男が隠亡であることに気付き、鶏のエサを調べると、確かに人骨が入っている。
しかも、それは、昨日、火葬された高利貸しの骨であった…」
「オール怪談@」に掲載された作品(タイトル不明)をリメイクしたものですが、古賀しんさく先生にとって、思い出深く、一番好きな作品とのことです。
この作品のアイデアは、「エコエコアザラク」の「自滅した男」でも再使用されております。
古賀しんさく(新一)先生が、創作人物の二ノ宮新吾と小桜加奈子に頼んで、四つの短編に出演してもらうという趣向のオムニバスです。
興味深いのは、冒頭で、古賀先生自身が「どんでん返しを用意したコミカルな短編」が得意と言っているところ。
実際、代表作の「エコエコアザラク」でも、シリアスな恐怖ものと共に、「どんでん返しを用意したコミカルな短編」がかなりの割合を占め、古賀新一先生を読み解くキーワードの一つだと私は考えております。(とは言え、検証はまだまだこれからですが…。)
・備考
ビニールカバー剥がし痕ひどし。糸綴じの穴あり。鉄鋲にて綴じ。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とボールペンでの書き込みあり。
2019年10月28日 ページ作成・執筆