高階良子
「悪魔たちのパラダイス@」(1988年11月30日初版発行)
「悪魔たちのパラダイス@」(1989年5月5日初版発行)

 収録作品

・「悪魔たちのパラダイス」(「ミステリー・ボニータ」掲載)
「第一話 天使たちの渚」
 片桐敏郎は子供の頃から「パラダイス島」に憧れていた。
 顔さえ知らぬ父親はそこを「この世の楽園」と形容するが、母親はそんな島のことは忘れるよう命じる。
 病弱な彼を連れ、母親は逃げるように転々と住居を変え、腎臓を悪くして死亡。
 青年になった敏郎は、島に向かうクルーズ船に密航するも、見つかり、射殺される直前に海に飛び込む。
 目を覚ますと、彼は金髪の少女に助けられ、彼女の小屋に匿われていた。
 彼女の名前は「ルナ」で、聞くと、ここは「パラダイス島」だと言う。
 「パラダイス島」は、世俗の毒にまみれていない天真爛漫な少年少女達が何不自由なく遊び暮らす「理想郷」であった。
 彼らはこの島以外のことは何も知らず、外界は「島の向こう側」にある島だけで、そこは「海の向こうの遠い国」に通じていると信じられていた。
 そして、この島の頂点に立つのが「ドクター・イワオ」で、その忠実な部下の「トミー」達が島民達の世話と監視をする。
 敏郎はルナと一緒に暮らし始めるが、トミー達に捕らえられ、ドクターのもとに連行される。
 彼がドクターに母親のことを話すと、ドクターは母親を知っており、彼の滞在を許可する。
 彼は島の素晴らしさに魅惑されるも、この島には若者しかいないことが引っかかる。
 ドクターによると、ここでは「永遠の若さ」が約束されているという。
 敏郎は、彼の母親がいたと言う「島の向こう側」に興味を持ち、機会を見て、侵入する。
 そこで彼が目にした真実とは…?
「第二話 波の墓標」(第一話から二十年以上前の話)
 巌敏明は生命の謎に魅せられた、若き天才医師。またの名を「クレイジー・ドクター」。
 彼は嵐の海で、政財界の陰の首領、船越栄造の船に助けられる。
 巌敏明は記憶を失っていたが、船越は気にせず、彼に南国の島をプレゼントする。
 この島は日本領海内にありながら、ごく一部の者にしか知られず、ここで敏明は自由に研究に打ち込むこととなる。
 ある日、彼は島で美しい少女と出会う。
 彼女は片桐真木子という名で、片桐代議士の養女であった。
 彼女は身体が弱く、船越にこの島を紹介され、半ば強引に島へ連れてこられたという。
 巌敏明は彼女に「天使」を見出し、ひそかに愛するようになる。
 しかし、彼は「悪魔に心を売った」人間で、その所業は非道極まりないものであった。
 だが、二人はお互いに惹かれあい、遂に結ばれる。
 真木子は彼のことを養父母に話すため、一度、帰国するのだが…。
 そして、彼女のお腹には彼との子供が宿っていた…。
「第三話 蒼き獣」
 あの事件の後、片桐敏郎は日本に戻される。
 復讐の念に燃えつつも、身を隠し、一介の警備員として働いていた。
 そんな彼に、桜井サチコという女性が近づいてくる。
 彼女は、彼が元・高級官僚の片桐代議士の孫だと見抜き、仲間になるよう求める。
 彼女の兄は新聞社の敏腕記者で、船越栄造について調査を進めていたが、突如、行方不明となる。
 後日、彼女の学生寮に兄から包みが届く。
 そこには、パラダイス島を映した写真と地図が入っていた。
 敏郎はパラダイス島に行くことを決意するものの、轢き逃げされ、連れ去られる。
 だが、何者かに助けられ、気が付くと、ホテルの一室で、サチコの看病を受けていた。
 傷が癒えた後、敏郎、サチコ、彼女の兄の同僚の舘孝志の三人はパラダイス島へと向かう。
 彼らの運命は…?

・「ドリーム・ドーム」
「池部広司は、父親が病気で倒れたため、大学を中退し、仕事を探す。
 すると、結城グループ会長、結城修一郎から会長宅で直々に面接することとなる。
 彼の採用は決定されるが、その仕事は「結城グループの重要機密と(会長)自身の秘密にふれる」ものであった。
 一週間後、彼が会長宅を訪ねると、邸の地下に案内される。
 地下には人工のドームがあり、エリという少女が暮らしていた。
 エリは結城修一郎の娘で、病気のために、無菌ドームの中でしか生きられず、生まれた時からここにいるという。
 彼の仕事とはここの管理とエリの世話であった。
 広司は彼女に、幼い頃に亡くなった母親の面影を見出し、毎日のように彼女のもとを訪れ、彼女と交流を深めていく。
 そのうちに、彼は彼女に外の世界を見せたいと思うようになるのだが…。
 結城修一郎の企みとは…?」

 「悪魔のパラダイス」の「第一話」「第二話」が単行本@、「第三話」と「ドリーム・ドーム」が単行本Aに収録されております。
 「悪魔たちのパラダイス」は、名作「地獄でメスがひかる」の続編的な内容です。
 マッド・ドクターの巌敏明が再登場しますが、主人公は彼の息子、片桐敏郎です。
 ただ、内容がイマイチ膨らまなかったようで、中途半端な終わり方をするのが残念…。(桜井サチコはあんまりです。)
 それは作者もわかっていたのか、「悪魔たちの巣」という続編があります。
 「ドリーム・ドーム」も、やけにドロドロしていて、結末もあまりすっきりしません。
 にしても、高階良子先生は「現実世界から隔離され、純粋培養された少女」の話が好きですが、元ネタって何なんでしょうかね?

2022年6月6・8日 ページ作成・執筆

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