福田年兼「幽霊部落2/地獄秘図」(2021年12月26日発行)

 収録作品

・「幽霊部落2」(兎月書房)
前回から二十数年。
 鬼村妖一は、東京山の手にある友愛病院の院長に出世する。
 だが、彼はx病菌に侵され、崩れた顔をマスクで隠していた。
 鬼村は知らなかったが、幽霊部落の追跡はいまだ続いており、病院の看護婦、小百合はスパイであった。
 子供の似顔絵によって、鬼村は小百合に感づかれ、追いつめられる。
 鬼村は、研究用に飼っていたコブラを使って、小百合を殺し、病院の地下室の壁に塗り込める。
 しかし、小百合の報告により、青霧洋介が友愛病院に向かっていた。
 彼は、父親と兄を鬼村に殺され、復讐の念に燃える。
 洋介が病院の地下室に忍び込んだ際、小百合の死体を発見する。
 翌朝、鬼村が回診に出ると、ベッドに小百合の死体がある。
 彼が慌てて地下室に向かったところで洋介に捕まり、小百合と同じく、壁に塗り込められる。
 ところが、急に発生した地震により、鬼村は壁から脱出し、逃走。
 その夜、鬼村は、山奥の一軒家で一晩の宿を乞う。
 その家には若い娘が一人で住んでいた。
 夜更け、娘は鬼村の寝込みを襲おうとする。
 だが、トランクのコブラに驚き、娘は家の外へと逃げ出す。
 娘を追った鬼村は、娘が鬼女であることを知るのだが…」

・「地獄秘図」(「妖霊B」(兎月書房)収録)
「気が付くと、鬼村妖一は広大な砂漠にいた。
 人の行列が見えたので、近寄ると、それは亡者で、ここは「地獄の入り口」だと言う。
 亡者達は三途の川を渡る順番を待っているところで、番人の鬼が妖一に声をかける。
 鬼は彼が渡し賃を持っていないので、鉄棒で殴打。
 特別に三途の川を渡してもらえるものの、向こう岸では「ただで川を渡った罰」として、沼に住む河童に内臓を食べられ、どてっ腹に穴が開いてしまう。
 その後、沼で水流に巻き込まれ、彼は洞窟へと吸い込まれる。
 ここは「魔耶殿への入口であり、三十六鬼の天ゴウ(注1)星七十二性の地熬星あわせて百八の魔が居住している魔窟であって、閻魔大王の手すらとどかぬ暗黒の次元であった」。
 妖一は目の前の岩を動かし、岩の下に閉じ込められた、天空界の暴れ者、青面獣を助ける。
 青面獣と共に、妖一は、徒歩で十年かかるという極楽を目指すのだが…」

 キクタヒロシ氏の「昭和のヤバい漫画」(彩図社)で紹介された大怪作が二作、奇跡の復刻です!!
 「幽霊部落2」は最初、読んだ時、本当に「カックン」きました。
 「なんでそ〜なるの?!」と声を出してツッコミを入れずに読むことはできません。
 あと、鬼娘はあの容貌に対し、意外と可愛いところがあって、人によっては萌えるかも。
 「地獄秘図」は個人的に大好きな「地獄めぐり」もので、傑作です。
 あまりに脈絡のない展開の数々が、バッド・トリップとしか形容のしようがなく、実に素晴らしい!!
 ラストの理不尽さも「地獄はそんな甘いもんじゃないんだぞ!!」という作者からのメッセージに違いありません。
 オリジナルの貸本を手に入れようと思ったら、恐らく、二冊あわせて、30万円は下らないのではないでしょうか?
 興味のある方は今のうちに買っておくが吉だと思います。

・注1
 「ゴウ」の字は「日」の下に「正」。

2022年8月26・27・30日 ページ作成・執筆

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