さがみゆき「恨み女の呪いぐし」(1988年9月16日発行/青225)

「吉備の国、庭妹(にいせ)に伝わる話。
 由緒ある家柄の香央(かさだ)家の娘、磯良と、その地の富豪、井沢家の息子、正太郎の結婚の吉凶が、吉備津神社で占われる。
 占いの結果は大凶で、神主は絶対に結婚はせぬようにと告げる。
 しかし、正太郎はどうしても磯良が欲しく、磯良も正太郎に一目惚れをしていたため、結局は結婚する運びとなる。
 磯良を嫁に貰って、正太郎は真面目になるかと思いきや、根が自由奔放な遊び人。
 一年も経たぬうちに、昔なじみの女、袖とよりを戻し、家にはほとんどよりつかなくなる。
 そんな男でも尽くせば、いつかは報われると信じて、磯良は自分の持参金や着物までも正太郎と愛人が住む家に持ち運ぶ。
 正太郎の父親は、これを知って、怒り狂い、正太郎を屋敷の座敷牢へと閉じ込める。
 だが、正太郎は磯良に改心すると見せかけて、親の金を持って、袖と駆け落ちをする。
 磯良は、正太郎に捨てられたショックで瀕死となり、正太郎の両親に彼を取り戻すと告げて、亡くなる。
 夜叉となった磯良は、手始めに、正太郎の愛人の袖を惨殺。
 自分の命も危ういことを知った正太郎は、ある僧に助けを求めるが…」

 ひばり書房黒枠単行本の「怪談雨月物語」をタイトルを変えて、ヒバリ・ヒット・コミックスで出したものです。
 原作は、上田秋成「雨月物語」の中の一編「吉備津の釜」。
 細かい部分はアレンジされておりますが、大筋は一緒です。
「浮気者がデストロイされる」話ですので、通常の作品よりもペンに力が入っているような気がしますね。
 説得力を出すためか(それとも自身の経験からか?)、嫉妬の鬼と化した女の描写(原作にはなし)を盛り込み、原作では祟りにより病死する愛人は惨殺されております。
 ラストで浮気者は(めでたく)「連れていかれる」のですが、この点に関してだけは、原作に及ばなかったように思います。
(もっとハードに八つ裂きにした方が良かったかも…個人的意見です。)
 何はともあれ、古典をアレンジした作品としては、いい線、いっているのではないでしょうか。

 あと、阿奈田(あなだ)もあ先生が協力をしております。
 この先生に関しては、詳しいことを知りませんが、スコラ・レディース・コミックで「恐怖宅配便」という単行本を出しております。

2016年1月12日 ページ作成・執筆
2018年5月19日 加筆訂正

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