池川伸治「奇母・奇墓」(220円)



「東京の世田谷。
 母親を亡くした少女、松田松枝。
 彼女は母親の死を受け入れることのできず、自分の一念で母親を生き返らせることを決意する。
 以来、起きている間は、ひたすら母親が生き返ることを太陽に祈り続ける。
 ある日、雷雨の中、松枝が墓場に駆け付けると、彼女の一念が通じ、母親が墓から蘇える。
 そして、松枝は母親から自分は毒殺されたことを聞かされるのであった。
 一方、松枝の父親は、妻の死後、大して日数も経たないのに、二度目の妻を迎えようとしていた。
 松枝の母親を毒殺したのは一体誰なのであろうか…?」

 アンソロジー「月夜」に四回に分けて、掲載されたものを一冊にまとめたものです。
(話の合間に、水江ひろみという新人さんのデビュー作「挽歌」「愛」の短編が二編載っております。)
 内容的には(幅広い意味での)「ゾンビ」ものです。(注1)
 ただし、この本もストーリーがぶれまくって、出来は芳しくありません。
 伏線の意味がないことが多く、その場しのぎでストーリーをつなげていった感じです。(他の作品にも共通することですが…。)
 それよりも、母親のゾンビが活躍する描写がほとんどないのが、個人的にはがっかりです。(大暴れしようよ!!)
 とにもかくにも、最も初期の「ゾンビ」マンガの一つではあると思います。

・注1
 「一念」だけで生き返る死者を扱ったものとしては、池川伸一・名義での「顔なし母の物語」「私の背中にくも女」(両方とも、ひばり書房・黒枠)があります。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、また、それにより本体、若干歪み。一部、ビニールカバーが剥げ、カバーに剥げ痕あり。糸綴じあり。本体上部に水濡れの痕あり。湿気により本体が全体的に歪み。

2016年9月4日 ページ作成・執筆

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