吉倉健「怪談蟻地獄」(200円)


「天正十一年、秀吉の世の大阪。
 浪人の勝浦は、出世するための金を集めるべく、辻斬りをしていた。
 だが、金だけが目的でなく、妖刀と言われる冷笑国次に血を吸わせる目的も兼ねていた。
 勝浦が冷笑国次と出会ったのは、去年、伏見城の火事に際して、火事場泥棒を働いた時。
 捕まりそうになるも、彼はいつの間にか冷笑国次を手にして追手を切りふせていた。
 後に、彼は冷笑国次の噂を耳にするが、彼はそれを決して手放す気にはなれない。
 彼は冷笑国次に操られるように、次々と人を斬っていく。
 そして、人を斬った後に刀から漂う、甘い匂いに夢中になる。
 しかし、出世のために、勝浦は冷笑国次を手放す決意をした時…」

 怪奇時代ものの定番、「妖刀もの」です。
 ここで注目すべきは、妖刀が笑ったり、自分で飛んでいって人を斬るといったアクティブな点です。
 アクティブな妖刀と言えば、黒岩一平(橋本将次)先生の傑作「魔風吸血剣」とどうしても比較してしまうのですが、吉倉健先生の方は画力がショボショボで、発想を活かせていないように思います。
 ラストの「蟻地獄」の描写もちょっと残念な出来です。
 ストーリーはそれなりに面白いのに残念…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。ビニールカバーに他の本のカバーが貼りつき、その剥げが付いている。本体、湿気による歪みあり。恐らく、鉄鋲による綴じあり。袖を留めているテープの痕あり。本文、ところどころ、シミのひどい箇所あり。前の遊び紙にスタンプ押印と鉛筆での書き込み。

2018年11月27日 ページ作成・執筆

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