さがみゆき「ほくそ笑む少女」(220円/1965年8月頃)



「白石千賀子は漫画家志望の、空想壁のある少女。
 母親は継母ではあったが、千賀子は温かい家庭に恵まれ、また、義兄の荒木健次にほのかな恋心を抱いていた。
 しかし、最近はこわい本の読みすぎで、陰惨な内容の空想ばかり。
 また、健次の恋人への嫉妬も、その傾向に拍車をかける。
 そんなある日、父親が脳溢血で急逝。
 千賀子は、父親が継母に殺されたのではないかと疑うようになる。
 だが、その継母も何者かに殺害され、結婚問題を揉めていた健次が、母親殺害の容疑をかけられる。
 すっかり妄想の虜となった千賀子は、自分が継母を殺したと刑事に話すが、逆に健次の容疑を深める結果となる。
 継母を殺した犯人は誰…?」

 唐沢俊一氏・監修「まんがの逆襲」(福武書店)内の「貸本マンガの愉しみ方 ふるえて笑え」にてちょこっと紹介された作品です。
 そこで、「きちんと謎の説明がなされているにもかかわらず、ストーリィがあまりに複雑すぎてよくわからない」(p188)、「貸本マンガの中では、いたずらに読みにくい、わかりづらい失敗作」(p189)ではないか?と述べられております。
 ですが、個人的には「野心作」(p189)として評価したいです。
 実際、唐沢俊一氏の指摘する通りなのですが、空想と現実の境目がひどく曖昧な、この不思議な雰囲気はなかなかに味わい深いのです。
 ミステリーというよりは、サイコ・スリラーに近い手触りのように思います。

 あと、作中で楳図かずお先生の漫画が扱われているのが、興味深くありました。
 さがみゆき先生への影響はかなり大きいと思います。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。全体的に軽く歪み。前の遊び紙にボールペンで落書き。後ろの遊び紙に紙の貼り付け。

2019年1月18日 ページ作成・執筆

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