「オール怪談・11」(150円/1960年頃?)



 収録作品

・古賀しんさく「月下の滝」
「松田千代子は甘えん坊の女の子。
 学校にも行かずに、母親にべったり。
 困り果てた両親は、青森の伯父の家に千代子をやって、乳離れさせようとする。
 三か月後の雨の日、千代子が両親のもとにたった一人で帰ってくる。
 両親は伯父が手に負えずに、黙って連れて来たと考えるが、それにしても、一言も声をかけないのはおかしい。
 一方、千代子は学校にはすぐに行かなくなり、前と同じように、母親のもとを離れない。
 しかも、何を言っても、死ぬと言って脅かし、両親は手を焼く。
 二か月後、母親は男児を出産する。
 以前ほど母親に甘えられなくなり、千代子は、土地で有名な滝の前で一人過ごすようになるが…」

・サツキ貫太「牧師舘の花嫁」
「小笠原謙介は東京で医院を開業している、若き医師。
 彼が東京に出てきたのは、古い写真に写っている娘を探すためであった。
 その娘は牧師の妹であったが、戦争時、空襲で教会は破壊され、兄妹も下男も亡くなっていた。
 ある夜、小笠原医師のもとに江崎町への往診を頼む電話がかかる。
 以来、彼は江崎町に毎夜、往診することになるが、彼のもとに居候する正は不審を抱く。
 江崎町は、空襲で荒れ果て、誰も住む人はいなかった。
 正は、小笠原医師が、教会の廃墟で、牧師の娘の幽霊と会っていることを知るのだが…」



・津野明朗「月と女と影と…」
「お千代は、影を踏まれることを非常に恐れていた。
 子供達は面白がって、彼女の影をわざと踏み、お千代はノイローゼ気味。
 ある夜、婚約者の新太郎が彼女の病気を治そうと月夜の散歩を誘うが、犬に襲われてしまう。
 侍に助けてもらうものの、お千代の影恐怖症は悪化。
 そこで、父親は祈祷師に相談する。
 祈祷師は子の刻(午前零時)に娘の影を映して、その影の形を見極めるよう、父親に告げる。
 その夜の子の刻、父親が娘を蝋燭で照らすと、壁には骸骨の影が映っていた…」
 元ネタは、岡本綺堂「影を踏まれた女」で、それに「一年前に許嫁を亡くした侍」が絡む話にアレンジしております。
 小島剛夕先生の影響(特に、女性と子供のキャラ)が強いですが、それ以外にも、脇役キャラが、いばら美喜先生の絵にそっくり!
 あくまで推測の域を出ませんが、いばら美喜先生がアシスタントとして、協力したのではないか?と考えております。(そのぐらい、似ています。)
 それとも、まさかとは思うけど、「津野明朗=いばら美喜」なのでしょうか?
 詳しいことを御存知の方がおられましたら、ご教示いただけると幸いです。


・古谷あきら「夜霧の滑走路」
「夜更け、最終電車で帰宅する男。
 帰り道、彼は道端で日記を拾う。
 帰宅後、その日記を読むと、毎夜、悪夢に悩まされると書いてあった。
 夜更け、彼の家に何者かが侵入し、日記帳を盗む。
 捕まえると、それは、彼の友人の桑本であった。
 桑本は日記を誰にも見られたくなかったと説明し、立ち去る。
 その後、主人公は夢か現(うつつ)か判別できない、奇怪な幻覚に幾つも襲われる。
 最後に、彼は桑本が飛行機に乗るところを目にするのだが、その時、桑本は…」
 ワケのわからない描写が連続して、非常に理解し難い内容になっております。(一応、粗筋を書いてはいますが、全く内容を伝えてはおりません。)
 ぶっちゃけ、失敗作でしょう。
 一つだけ興味深かったのは、「保険金目当てに、飛行機に爆薬を積み込んで、事故に見せかける」というところ。
 名サイト「マジソンズ博覧会」内の「殺人博物館」での「奇妙な殺し方」の項目に「航空機事故」があります。
 その中での「アルベール・ガイ」もしくは「ジョン・グレアム」の記事が頭にあったのでしょうか?

・山下よしお「黒い日記」
「山で遭難した公彦と絹子。
 二人が洞窟に避難していた時、山中に灯りが見える。
 そこには家があり、アメリカ人の娘が一人で住んでいた。
 絹子は最初に彼女を見た時、右頬に黒いアザをあるように見えるが、彼女の見間違いにされる。
 アメリカ娘は二人に、彼女の恋人だったブリジットについて話す。
 そして、彼女の右頬に浮かび上がる、黒いアザの由来にも話は及ぶのだった…」
 奇妙な味わいを持つ話です。
 ただ、どうにも気になったのが、十年前の「1950年」に「サイパン基地に行って日本空襲をする」との記述。
 1950年というので、朝鮮戦争かと思いきや、太平洋戦争の話だったので、明らかに間違っております。
 この本が発行されたのは1960年頃で、まだ敗戦から15年しか経っておりません。
 もうその頃には、若者にとって戦後は遠くなっていたのでありましょうか?

・備考
 状態悪し。カバー貼り付け、また、痛みや欠損が大。パラフィン紙をカバーに貼り付け(撮影の際、一部、剥がしました)。糸綴じあり。本体、水濡れによる歪み。汚れ、裂け、シミ小欠損が無数にあるも、大欠損・落丁・落書きはなし(読むぶんには全く問題がないので、ありがたや〜。)後ろの遊び紙に貸本店のスタンプあり。

2019年8月20日 執筆・ページ作成

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