「オール怪談・50」(200円)
収録作品
・浜慎二「地獄か?」
「逃亡中の殺人犯、西田。
幾多の捜査網をかいくぐりながらも、ある夜、遂に袋小路に追い詰められる。
だが、突如、彼の身体は、塀を通り抜け、奇妙な空間に迷い込む。
幅十センチの壁の中には異空間が広がり、同じく迷い込んだ一匹の子犬と、白骨死体があった。
西田は現実世界への出入り口を探り当てるが、出入り口は普通の壁と全く変わらない。
西田は、子犬を捜しに来た少年に、異空間への入り口近くに落書きをさせ、それを目印とする。
こうして、彼はほとぼりが冷めるまで、そこを隠れ家にすることに決めるのだが…」
・小島剛夕「乾いた眼」
「長崎でシーボルトの教えを受け、江戸では蘭方医として名声を得た青年。
彼は医学の発展のために、腑分け(解剖)の研究に心血を注ぐ。
彼には許嫁がいたが、彼女は食中毒から腹膜炎を起こし、肝臓まで侵されてしまう。
彼女を救うには、「死にたてホヤホヤ」の死体から、新鮮な内臓を移植する他ない。
かと言って、そうそう若い娘の死体が都合よく手に入るわけがなく、彼は苦悩する。
そこへ、アル中の女掏摸が薬を求めてとびこんでくる。
青年は女掏摸を麻酔薬で眠らし、その内臓を許嫁に移植する。
だが、手術の間中、女掏摸の死体は虚ろな目を見開き、青年を見つめ続ける。
手術は無事に成功し、端午の節句に二人の結婚式が執り行われるのだが…」
小島剛夕先生には珍しく、気味が悪いというか、背筋の寒くなる作品です。
題材からして猟奇的で、若い娘を生きたまま解剖するシーンは直接的な描写はないものの、やけに陰惨。(ただし、手術シーンのページのつながりがイマイチ釈然としない。)
そして、あまりに虚ろな「乾いた眼」の目力は、さすが小島剛夕先生です。
・古賀しんさく「廃屋」
「一昨年、客船の遭難事故で妻を失って以来、人が変わってしまった男。
ある冬の日、彼は、路上で売られる風景画に目を留める。
その中の、廃屋を描いた絵の中に、彼の妻が描かれていた。
彼はその絵を買って帰るが、不思議なことに、絵の中の妻が徐々に廃屋へと近づいていく。
彼女の姿が絵の中から消えた時、男はこの廃屋に妻がいると確信するのだが…」
元ネタは、モンターギュ・ローズ・ジェイムズの名作「銅版画」でしょう。
オチもきっちりしてますが、絵の出所が曖昧で、そこがちょっと不満です。
・サツキ貫太「落葉」(1963年12月完成)
「質屋殺しの罪で、死刑を宣告された黒沢という中年男性。
彼は無実を訴えるが、野田刑事に犯人扱いされ、妻は幼い子供を殺して、自殺してしまう。
また、野田刑事の上司、大森は黒沢を無罪を信じ、奔走するが、結局、無罪を証明できず、辞表を提出する破目になる。
処刑一時間前、黒沢は野田刑事に、独房から見える木の落葉が全て落ちた時、思い知るだろうと告げる。
野田刑事は、黒沢の処刑が確認されるまで、刑務所の周りをうろつくのだが…」
扉絵と、浜慎二先生の「地獄か?」が「怪談・98」にて再録。
・備考
ビニールカバー貼り付け。背表紙のカバー、上部が一部欠損かつ痛み。全体的に茶シミ。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年10月17日 ページ作成・執筆