「オール怪談・56」(200円/1964年)
収録作品
・鹿野はるお「幽霊ばなし」
「文政三年(1820年)、松代藩。
凶作続きで領内は惨憺たる有様であったが、松代藩の郡奉行、野辺地八郎右ヱ門は百姓達を徹底的にに搾取する。
あまりのひどさに、庄屋の善右ヱ門は、領主の駒井長門守のいる江戸に出向き、直訴しようと試みる。
しかし、作男の密告により、計画は発覚し、善右ヱ門夫婦だけでなく、幼い子供二人も打ち首獄門となる。
また、僧籍にいたために刑を免れた善右ヱ門の父親も、孫の首を抱き、川に身を投げるのであった。
このことを密偵から聞いた、駒井長門守は手を打つ必要があると考える。
次の夜、庭を散策していた長門守の前に、善右ヱ門が現れて、国元の惨状を訴える…」
・白土三平「十蔵岩」
「天文年間、山城国。
新領主、黒岩兵庫に対して、各地で蜂起した農民達。
その主力をなす、苦汁(にがり)の十蔵が率いる一群は新領主の娘、雪姫をさらい、生木山へと立てこもる。
十蔵はたった一人で、黒岩兵庫の陣地へ直談判に赴く。
そこには、十蔵の妻子が人質として捕らえられていた。
妻子の命を奪うと脅されても、十蔵は自分達の要求が通るまでは絶対に引かない。
しかし、肝心の切り札の雪姫を兵庫に取り戻され、十蔵はピンチに陥る。
十蔵を男と見込んだ兵庫は、十蔵の命を助け、妻子を解放する。
だが、それは兵庫の罠であった…」
・岩井しげお「夜毎死ぬ男」
「武芸修行中の司新吾は、破れ辻堂で夜を過ごす。
そこで、竜禅と名乗る、放浪の坊主と相宿をすることとなる。
どうも怪しい坊主だと思いつつ、疲れもあり、新吾は寝入る。
夜更け、竜禅の悲鳴で目を覚ますと、竜禅の身体が八つ裂きにされ、最後に首が切断される。
気を失った新吾が、翌朝、目を覚ますと、竜禅は元通りの姿で、傷一つなかった。
訝る新吾に、竜禅は昨夜見たことは現実であると話す。
そして、夜毎死ぬわけを説明するのだった…」
・関すすむ「鬼婆」
「深い傷を負いながらも、官軍の手から逃れようとする幕軍の青年。
彼は、意識を失ったところを、若い娘によって保護され、手厚い看護を受ける。
そのお陰で快方に向かう青年と娘の間に愛情が育まれていくが、娘には秘密があった。
娘は、人の生き血と生き胆を摂らなければ、生きてはいけない身体だったのだ…」
相変わらずのテキト〜さです。
しかも、ラストをムリヤリに「ハッピーエンド」にしておりますので、「ガクゼン!!」としました。
でも、実は、この本の中で一番好きな作品だったりします。
・備考
カバー貼り付け。パラフィン紙の剥がし痕あり、袖や遊び紙に貼りつきや破れあり。本体に歪みあり。糸綴じあり。pp35・36(白土作品)、コマにかかる裂けあり。本文中、目立つシミ多し。p71(岩井作品)、赤鉛筆による漢字(?)の落書きあり。
2016年5月29日 ページ作成・執筆