「オール怪談・76」(220円)
収録作品
・小島剛夕「蒼ざめた海」
「日清戦争の後頃。
アメリカへの定期貨物船辰己丸の初航海の帰途でのこと。
船内で「おこり」(マラリア等の伝染病)による死者が発生。
彼を水葬礼にするが、彼は生きていると水夫長の老人が取り乱す。
後で、船長は彼に理由を聞くと、老人は彼の過去を話し出すのだった。
三十年前、まだ江戸時代だった頃、彼は江戸から九州への回航船の船長だった。
ある航海の途中、船内で「おこり」にかかった者が出る。
彼は病が他の人間に広がることを恐れ、病人を帆布に包み、生きたまま、海に投げ込んだのだった。
それ以来、月夜の凪の夜には必ずその病人の姿を見るようになる…」
「怪談別冊 時代特集M」(つばめ出版)からの再録。カラーのタイトルページを御覧になりたい方はそちらのページをどうぞ。
・いばら美喜「ある遺伝」
「とある男の妻の家系には、ある年齢になると、顔がひび割れるという奇病があった。
しかも、その年齢は早まるばかり。妻は悲嘆のあまり、自殺してしまう。
男は、まだ赤ん坊である一人娘の行く末を案じ、家に仕える爺やに頼んで、赤ん坊をよその赤ん坊とすり換えようとする…」
「怪談・55」(つばめ出版)からの再録。カラーのタイトルページを御覧になりたい方はそちらのページをどうぞ。
・浜慎二「黒い奴達」
「拳銃作りの老人に、拳銃を作ってもらった殺し屋。
殺し屋は老人を射殺するが、老人は今際の際にその拳銃を使わせないと言い残す。
殺し屋の耳に老人の最期の言葉がこびりつき、殺し屋はその拳銃を使わないことにする。
が、その拳銃を手に入れた、彼の部下がその銃で事故死したことを手始めに、その拳銃を手にしたものは皆、命を失うのだった…」
・松下哲也「1+1=3のギロチン」
「会社を辞め、地下室に閉じこもる父親。
彼らの子供は病気で、全てのことに無関心だったのが、父親の数学書を目にしてから、至る所に数字を書きなぐるようになる。
ある日、子供が書きつけた数字を追って、母親は地下室に入り込む。
そこには、父親が発明している途中のコンピューターがあった。
父親が説明するには、彼は電子工学の会社の技師だったが、会社の電子計算機に彼の死を告げられ、役職を取り上げられた。
そのため、「人間の運命が電子計算機の数字から逃げられる機械」を彼はつくっていたのだった…」
この粗筋を読んでも、よくわからないとは思いますが、私も内容がよく把握できません。
運命を予言するコンピューターとその予言を覆すためのコンピューターの開発という発想自体は面白いと思うのですが、話がまとまりがなく、また明らかに説明不足です。
残念ながら、失敗作だと思います。
・備考
状態悪し。カバー痛み及び貼り付け。ビニールカバー貼り付け、及びビニールカバーの縮みによる本体歪み。糸綴じあり。本体に割れ多々あり。後の見返しに貸出票貼り付け。
平成26年12月16日 ページ作成・執筆