松下哲也「怪談美幌峠」(220円)

「北海道。
 旅の途中の幌馬車の中、ある夫婦の間に女児が誕生する。
 産まれた場所が、美幌峠なので、父親の新蔵は女児を「美幌」と名づける。
 夫婦は、その後、立ち寄った鎌田市郎の勧めで、その地で農業を営むことにする。
 が、美幌を産んだ夜、美幌の母親は産褥熱で他界。
 美幌は、鎌田市郎の息子、欣也(てつや)と兄妹のように育つ。
 しかし、寒害により、作物に壊滅的な被害を受けた新蔵は、禁猟である「クマパッパ」(注1)に手を出し、結局、逃げるようにこの地を去ることとなる。
 新天地を求めて、稚内へ向かう新蔵と美幌だが、船が座礁。
 二人は別れ離れとなるが、幸い美幌は通りがかった漁船に拾われる。
 硫黄山の見える旅館の主人の養女として迎えられた美幌は、数年後、父親と運命の再会を果たす。
 そして、欣也とも。
 だが、三人の再会に、父親の過去が暗い影を落とす…」

 北海道を舞台にしたロマンチックなストーリーかと思いきや、武田泰淳「ひかりごけ」となるのであります。
 この展開があまりに唐突で、もう少しスマートにストーリーを組み立てていたら…と悔やまれます。
 とは言うものの、貸本マンガにしては全体的に丁寧に描かれており、自然描写も頑張っておりまして、松下哲也先生の力の入れようが伝わってきます。
 時代を考えますと、「良作」ではあるでしょう。愛着のある一作です。
 ちなみに、「怪談」ではありません…。

・注1
「クマパッパ」とは、「鮭の腹に火薬を詰めて、木の枝にぶら下げて、熊が噛み付いたら、ドカン!!」という罠であります。
 本当にこういう罠があったのかどうか知識がないのですが、矢口高雄先生のマンガを読む機会があれば、チェックしておきましょう。

・備考
 カバー貼り付け。背表紙上部痛み。カバーの裏側、上部に鼠にかじられたような痕あり。ビニールカバーを剥がした痕あり。巻末、貸出票貼り付け、また、貸本店のスタンプ押印。

平成27年8月20日 ページ作成・執筆

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