大石まどか「黒い炎と死の乙女」(220円)
「元・ヤクザの山崎は俳優の斡旋業を行っていたが、稼ぎ頭の幸子に去られ、プロダクションが倒産。
その夜、自室でやけ酒を煽っていると、悪友の伴と子分のサブがやって来る。
それと、もう一人、来客があったが、それは、金貸しの女性、小谷であった。
彼女は借金の返済を迫るが、無論、金などあるわけなく、このままでは契約書に従って、土地と家屋が抵当に取られることとなる。
伴の入れ知恵により、山崎は、金の当てがあるふうを装い、伴、サブと共に、彼女を車で連れ出す。
そして、ひと気のない所で、山崎は彼女を絞殺し、死体を川に遺棄する。
小谷は集金の最中で、カバンの中には三百万円の大金があった。
三人が金の相談をしている時、一人の少女が訪ねてくる。
それは、小谷の娘、あざみで、母の行方を捜していた。
山崎が、知らないと答えると、少女は静かに去る。
その夜、罪悪感で興奮したサブは、伴と共に飲みに出る。
サブはしこたま飲んだ後、あざみの姿が見えると道路に出ていき、トラックに轢かれて死亡。
翌日、山崎と伴は、裏切り者の幸子に復讐(方法が、全身に刺青を入れるというのが何ちゅ〜か…)する為、車で彼女の住居へ向かう。
すると、幸子は、移籍先の寿プロダクションの社長と若手達と、旅行に出る所であった。
山崎達は後をつけるが、途中で見失ったらしく、辿り着いたホテルに仕方なく泊まる。
だが、今度は、伴が、あざみと小谷の幻覚に悩まされ、様子がおかしくなっていく。
彼らにつきまとう少女の正体とは…?」
大石まどか先生はベテランだけあって、絵は非常にいいのですが、一つ大きな弱点があります。
それは、ストーリーの弱さ。
この話は、殺した金貸しの老婆の娘の復讐なのですが、肝心の娘が、生きているのか、それとも、幽霊なのかがはっきりしません。
この娘に関しては、主人公が「おとなしそうな子だったが、どこか弱々しい感じだったな」というセリフしか説明がないのであります。
結局、曖昧なまま、ラストを迎え、読後、もやもやした感じしか残らないと思います。
まあ、ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」のように、曖昧さを狙ってやっていたのなら大したものですが…。(実際は、単に説明不足なだけです。)
ちなみに、白眉は、金貸しの女性を殺害するシーン。
この緊張感に陰湿さ、なかなかのものです。
・備考
カバー貼り付け。背表紙がひどく色褪せ。糸綴じあり。後ろの遊び紙欠損。
2020年2月15日 ページ作成・執筆