杉戸光史「血こうもり」(240円/1969年頃)
「世間をあっと言わせた、三億円強奪事件(注1)。
その騒動の影に、体内の血を全て失って変死する怪事件が起こっていた。
ある日、資産家の佐川家に一人の娘が運び込まれる。
その家の娘、美津子が自動車で人身事故を起こしてしまったのであった。
娘は意識を取り戻すが、記憶を失っていた。
娘は家で静養することとなり、その家の長男、正一は彼女に恋心を抱く。
一方、両親のもとには吸血鬼からの殺人予告が届いていており、ある夜、美津子が吸血鬼に襲われるという事件も起こる。
ある日、病院がてら、正一は記憶喪失の娘と山中を散歩をする。
霧深き中、そこで、正一達は「三億円強奪事件」の犯人達と遭遇してしまう。
口封じのために、犯人達に襲われ、正一は娘を逃がそうとするも、致命的な刺傷を負う。
娘も胸を刺されるが、自分の血を見た時、彼女は記憶を取り戻す。
娘の正体は…?
そして、正一の家族を狙う、吸血鬼は一体誰…?」
漫画家にしろ、小説家にしろ、「作家」というものが、当節の流行や事件を取り入れるのは自然なことです。
んにしても、「三億円強奪事件」と「吸血鬼」を組み合わせるとは、なかなか斬新(…を通り越して、キテレツ)ではないでしょうか。
ストーリー的には「ユル~い」ところがありますが、ミステリー仕立てでまあまあ面白いと思います。
ただ、吸血鬼の格好が、全身黒タイツに背中に翼…というもので、あまりに「もっさり」しているのが、かなりのダメージです。
まあ、「吸血鬼」を扱ったマンガは星の数ほどありまして、こんな吸血鬼がいても、まあ、いいんじゃない。
・注1
「三億円強奪事件」は1968年12月10日に起こりました。
よって、この作品が描かれたのは、1969年頃でしょう。
・備考
状態悪し。Y文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバー痛み、また、背表紙色褪せ。
2016年7月15日 ページ作成・執筆