いばら美喜「怪談欲の皮」(220円)
・「怪談欲の皮」
「夜の砂浜をうろつく、金のないチンピラ二人。
彼らは、白い布に包んだ荷物を大事そうに持っている、中年の男性から、その荷物を奪い取る。
荷物を奪われた男性は、実はヤクザの組長で、荷物の中の胸像には麻薬が隠されていた。
彼は、取引相手が手下を使って胸像を奪ったと思い込み、麻薬の取引場所で抗議する。
だが、話がこじれ、組長はマシンガンで撃たれ、首が飛ぶ。
一方、胸像を奪った二人は、胸像の中には小麦粉らしき袋が幾つか入っているだけで、がっかり。
しかし、この胸像を景品に使って、スイカ割りを催し、一儲けを企むのだが…」
個人的に、あまり出来のいい話と思いません。
いばら美喜先生の理屈を超えた「説得力」がいまいち弱いような気がします。
このアンソロジーに収録されたのは、「スイカ」を食べる描写故でしょう。
インパクトはあることはあるのですが、所詮はそれだけで、ストーリー的に重要性はありません。
いばら美喜先生にはもっともっと面白い作品が貸本時代にあるので、それを復刻して欲しかったです。
後に、「怪談スリラー」(ひばり書房黒枠単行本)に「真っ二つ」のタイトルで再録されております。
・「良心」
「現金輸送車を襲って、大金を手にした男たち。
しかし、彼らの前に、自分の姿にそっくりな男が現れる。
それは、彼らの捨てたはずの「良心」だった…」
元ネタは、エドガー・アラン・ポーの「ウィリアム・ウィルソン」でしょう。
が、独特のアレンジを施し、自家薬籠中の物にしております。
「怪談・43」(貸本/つばめ出版)からの再録です。
・「パピロの壷」
「アフリカの奥地から帰国してきた教授を狙う、ギャングの一味。
その教授の持っている、パピロの壷は、二億円もの価値のあるものだという。
二億円という金額に目がくらみ、ギャング達は壺をめぐって争う。
壷の中身は「接着剤」らしいのだが…?」
「怪談・46」(貸本/つばめ出版)からの再録です。
「怪談」で発表された、いばら美喜先生の作品を三つ、収録した本です。
が、何故にこのチョイス?
もっと面白い作品があると思うのですが、誰が選んだのでしょうか?
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じの穴あり。後ろの遊び紙に鉛筆で数字の記入あり。
2019年11月14日 ページ作成・執筆