池川伸治「へん血くりん」(220円)
「森の中で出会った少女に恋をした誠。
彼女の美しさに心奪われながらも、シャイな性格故、どうしても話しかけることができず、日々離れた場所から見つめるだけ。
更に、つまらないことから彼女に誤解されてしまい、誠は落胆と自己嫌悪のあまり、病みついてしまう。
ある日、誠の病室に、くだんの少女が訪ねてくる。
なおみという名の少女は誠を励まし、彼のために赤い粉末の薬を渡す。
彼女は日々誠を見舞い、誠はめきめきと回復。
一月後、誠は健康を取り戻し、なおみとすっかり打ち解け、幸せいっぱいであった。
しかし、なおみは自分の心は汚れたと、悲しい顔を時折見せる。
そんな時、病院の院長が誠に赤い粉末の薬について聴きに来る。
その薬は人間の血液を乾燥させたものであった。
しかも、誠が入院している最中に起こった、十七歳の青年が十三人殺された事件と関わりがあるらしい。
誠はことの真偽を確かめるため、なおみのもとに向かうのだが…」
漫画史に残るナイス・タイトル「へん血くりん」。
どんな内容なのかと期待に胸膨らみますが、ストーリーとは一切関連がありません。
「勢いだけで」タイトルをつけた模様ですが、あえて「才気走ったため」と善意に解釈しておきましょう。
ストーリーは、池川伸治流ラブ・ストーリーです。
とは言え、「殺人狂時代」のチャップリンみたいなセリフを主人公に言わせたりして、妙なところで「精神的」「政治的」なのが相変わらず。
ただ、この作品に関しては、下手に伏線を張ってストーリーを混乱させておらず、一本筋は通ってますので、まあまあ読みやすいです。
「FREE AT LAST」(注1)な結末はちょっぴりしんみりします。
・注1
アルバート・アイラーのアルバム「ニュー・グラス(NEW GRASS)」に収録されているナンバー。
私、この曲、大好きなんです。
・備考
ビニールカバー剥がし痕ひどし(表紙の白地の部分、わかりにくいですが、剥げている部分あり)。読み癖あり。目立つシミ、幾つかあり。pp10・11、pp56・57、くっついたための剥げ痕あり。後ろの遊び紙、貸出票の剥がし痕あり。
2017年2月13日 ページ作成・執筆