杉戸光史「キンメ墓とユリ」(220円)

「綿小路公彦は、山形県大嵐山の奥にある温泉郷、鬼菊村を訪れる。
 そこは、十五年前に彼の父親が怪死を遂げた場所であった。
 公彦の祖先は城づくりの名人であり、彼の家には金目堂の模型が代々伝えられていた。
 金目堂は鬼菊村にあったとされ、公彦の父親は旅行で出かけたものの、発狂し、一週間後、城跡の沼で死体となって浮かんでいたのであった。
 公彦は父親の死の真相を明らかにするつもりで来たが、鬼菊村の人は彼を「厄人」と呼び、敵意を露わにする。
 特に、金目神社の神主は、信者たちに彼を村から叩き出すよう命じて、彼は袋叩きにあいそうになる。
 命からがら逃げだした公彦は、村に来る途中、手助けした京子という少女と再会し、彼女の父が経営する旅館にひそかに泊まる。
 京子によると、金目神社の神主には神通力があり、以前、温泉の湯が止まって、皆が困っていた時、あの神主の祈祷により、湯がまた出始めたのだという。
 以来、温泉旅館の経営者達は神主に帰依し、過大なお布施を要求されても断れないのであった。
 また、神主は公彦が来ることも予言しており、彼は金目神社に災いをもたらすものとされていた。
 その夜、公彦は、美しい歌声に耳にして目覚める。
 庭では、彼が村で幾度となく目にするも、すぐに姿を消してしまう娘が庭石に腰をかけ、歌っていた。
 深い霧の中、公彦が彼女の後をつけると、金目神社の神主と建築会社の社長が会話しているところに出くわす。
 二人の話から、神主の神通力は眉唾ものであり、神主と社長は結託して金儲けをしようとしていることが判明する。
 そんな時に、公彦はくしゃみをしてしまい、ピンチに陥るが、謎の娘により危機を救われる。
 公彦が娘を訝っていると、急な睡魔に襲われ、気が付くと、娘の家に寝かされていた。
 ゆりと名乗る娘は彼のことは何でも知っており、障子の外には、実物大の金目堂がある。
 ゆりは公彦に、神主と建築屋が村人をだましていることを明らかにするよう頼む。
 公彦は彼女への愛を打ち明けるが、彼女は一生金目堂を見守らなければならない役目があると彼の愛を拒む。
 問い詰めようとするも、公彦は再び睡魔に襲われ、明け方、野原で京子に発見される。
 風邪をこじらせた公彦は高熱を発し、意識不明のまま、数日が過ぎる。
 京子は彼を看病するものの、うわ言から発せられる「ゆり」の名に、嫉妬を募らせていく。
 意識を取り戻した公彦は、衰弱した身体のまま、ゆりのもとに向かうのだが…。
 ゆりの正体とは…?
 そして、京子の嫉妬がもたらす結果とは…?」

 実は、杉戸光史版「金閣寺」なのです。(テキト~言ってます。)
 ネタバレですが、ラストはやっぱり「金閣炎上」。
 あと、ゆりの正体ですが、最初の方の「pp12・13」に伏線が張られております。
 あまりにさりげないので、気付かなかった人、多数と思われます。(「サスペリア2」並み?)

・備考
 ビニールカバー貼り付け、また、それによる本体の歪み。糸綴じあり。後ろの遊び紙に赤ボールペンでの落書きあり。

2017年11月17日 ページ作成・執筆

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