池川伸治「鬼子母神」(220円/1967年12月23日完成)

「もうすぐ姉となる千里の家を、禿頭の男性が訪れる。
 彼は、安産のお守りと称して、「鬼子母神」と書かれた紙を家中に貼る。
 その夜以来、千里はその紙の中から女神が現れるという夢を見るようになる。
 それと同時に、千里の行動は常軌を逸していく。
 彼女は、アツアツのカップルを見かけると、その仲を破綻させずにはいられない。
 千里の恋人、光二郎が千里に理由を問い質すと、彼ら二人がこの世の全ての愛を独占するためと答える。
 彼女によれば、「愛の数はこの世で(…)いくつあるか決まって」(p51)おり、「人が愛を語りあうと 私達の分がなくなってしまう」(p51)とのことであった。
 千里の行動はエスカレートし、夢の中の女神から授かった眼力で、千里は男達を虜にし、彼らに命じて、片端からカップルの仲を裂こうとする。
 一方、光二郎は千里のもとから去ることを決意していた。
 切羽詰まった千里は、光二郎に眼力を用いるのだが…」

 アイデア、ストーリー共になかなか面白いと思います。
 ただ、冒頭に現れる禿頭の男性や、お札から現れる女神の説明が一切ありません。
 池川伸治先生としては、「我利我利亡者」の行く末を描きたかったのかもしれませんが、相変わらず描きとばしているため、詰めが甘い印象があります。

・備考
 非貸本に近し。カバー背表紙、色褪せと痛みあり。後ろの遊び紙に書き込みあり。

2017年4月2日 ページ作成・執筆

貸本・ひばり書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る