さがみゆき「鏡のない部屋」(200円/1964年頃)



「嵐の夜、池永よりこは窓がバタバタ開閉する音で目を覚ます。
 音は二階の部屋から聞こえ、よりこは窓を閉めにその部屋に赴く。
 そこで、彼女は、顔半分に包帯を巻いた女性を鏡に見る。
 翌朝、よりこは兄にこのことを話すが、一笑に付される。
 兄は、部屋には鍵が掛かっていること、昨夜は嵐などなかったと告げる。
 だが、よりこは兄が嘘をついていることを見抜き、何か秘密があると考える。
 そんな時、シナリオライターの兄のもとに、女優の池田ゆり子と俳優の上山国夫が遊びに来る。
 上山国男はカメラにはまっており、戯れによりこを写す。
 すると、その写真の背景に、失踪中の女優、中原ミチも写っていた。
 中原ミチは顔半分に包帯を巻き、よりこの見た包帯女と同一人物であった。
 上山は、中原ミチと恋仲だった、よりこの兄が真相を知っていると思い、聴き出そうとするが、黙して語ろうとしない。
 また、池田ゆり子はこの写真に疑心暗鬼を募らせる。
 彼女は、映画の主役を奪うために、中原ミチを事故を装い、殺したのであった。
 包帯女の正体は…?
 そして、よりこの兄の思惑とは…?」

 なかなかサスペンスフルな展開が楽しめます。
 が、やっぱり、ストーリー的には辻褄の合わないところがちらほら…どころか、ボロだらけです。
 第一、タイトルが「鏡のない部屋」なのに、鏡があるのがどうも…。
 それなのに、まあまあ読ませるのは、目的のためには手段を選ばない、池田ゆり子の描写でありましょう。
 ヒロインよりも、「悪女」キャラの池田ゆり子の方が遥かに活き活きとしており、それがこの作品の最大の魅力のように思います。
 さがみゆき先生の「悪女」キャラ…いいですよ。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、ただし、裏で一部が剥がれ、カバーも剥げ。糸綴じあり。後ろの遊び紙に鉛筆で簡単な書き込みあり。

2018年2月16日 ページ作成・執筆

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