菊川近子「悪魔のほほえみ」(1985年5月14日第1刷・1988年11月21日第16刷発行)

 収録作品

・「悪魔のほほえみ」(昭和60年発行「ハローフレンド5月号」所載)
「グズでノロマな劣等生の中橋沙都。
 担任の沢木先生は何故か彼女をえこひいきをしており、クラスメートの嫉妬と憎悪は高まるばかり。
 沙都の幼馴染の夏美は心配するが、沙都にとって沢木先生は、自分の可能性を引き出そうとしている、大切な存在であった。
 ある週末、沢木先生は沙都に日帰り旅行を提案する。
 沢木先生に連れられ、沙都が向かったのは、山奥にある古びた洋館であった。
 ドアの上には奇妙な紋章がかかっており、それは悪魔がこの家を支配している印だと沢木先生は話す。
 そして、悪魔の呪いを消し、素晴らしい力を得るためにも、沢木先生はこの紋章を壊すよう、沙都を促す。
 言われるまま、沙都は紋章を叩き壊すが、彼女の得た力とは…?」

・「真夜中の鎮魂曲」(昭和60年発行「ハローフレンド3月号」所載)
「ある屋敷に引っ越してきた品野一家。
 両親と二人の娘の四人家族で、次女の理瀬は趣味のバイオリンに夢中であった。
 しかし、転校した学校で、理瀬がバイオリンの趣味について話すと、何故かクラスメート達に気味悪がられる。
 更に、姉の沙世の様子がおかしくなり、バイオリンを弾けないはずなのに、夜中、理瀬の部屋に忍んでは、バイオリンを弾いていた。
 その際に、理瀬は、姉ではなく、髪の長い少女の姿が目に映る。
 この髪の長い少女は真奈美という少女らしいのだが…」

・「アステカの魔神」(昭和59年発行「ハローフレンド6月号」所載)
「麻槻瑞穂は転校後、クラスになじめず、孤立していた。
 友達もできず、成績で認められようとするものの、逆に孤立を深めてしまう。
 そんな暗い日々、瑞穂は授業でアステカの神の話を聞く。
 生贄を必要とするような神なら、どんな願いでも叶えてくれると瑞穂は考え、辞典から切り取った写真に友達ができるよう祈る。
 翌日、望み通りに、友達ができ、瑞穂は大喜びするが、突如、全身にアステカ絵文字の模様が浮き出る。
 それは、アステカの神が、望みを叶えた代わりに、生贄を捧げるよう警告するものであった。
 ペットの小鳥を殺して捧げると、絵文字のあざは消え、瑞穂はアステカの神の力の大きさに感嘆する。
 だが、瑞穂の望みは回を追う事に大きくなり、要求される生贄もそれに比例していく…」
 アステカの神に祈りを捧げて云々といった作品に、三原一晃「白雪姫は悪魔の使い」(立風書房)があります。
 三原一晃先生には申し訳ないのですが、菊川近子先生の作品の方が遥かに面白いです。

・「悪魔のささやき」(昭和59年発行「ハローフレンド9月号」所載)
「資産家として知られる弓岡家の邸宅を訪れた、仲佳織。
 彼女は先日、謎の投身自殺を遂げた弓岡家の娘、真朝と容姿がそっくりであった。
 真朝とは同じ寮で、無二の親友だったと話す佳織は、真朝の死のショックから立ち直っていない両親に取り入り、娘の座につく。
 佳織は、真朝の婚約者、朝田財閥の御曹司、和也に引き合わされ、互いに惹かれるが、和也はどこか引っかかるものを感じる。
 佳織の真の目的とは…?」

 相変わらず、絵も内容も安定しており、安心して読めます。
 個人的なお勧めは、「アステカの魔神」と「悪魔のささやき」です。
 特に、「アステカの魔神」は、ほろりとくるラストで、かなりのお気に入りです。

2016年11月28日 ページ作成・執筆

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