橋本将次「怪談石子詰」(170円)
・橋本将次「怪談石子詰」
「昔、奈良では神鹿を殺した者は石子詰の極刑に処せられた。
ある日、彫師甚九郎の倅、佐吉が石子詰にされる。
佐吉は賢い子で、甚九郎は何故、息子が鹿を殺したのか全く腑に落ちない。
鹿が殺された時、弟子の和助が近くにいたが、彼は振り返ると佐吉のそばで鹿が死んでいたとしか言わない。
だが、本当は鹿を殺したのは所司代の息子で、和助は本当のことを話せば命はないと脅されていた。
数か月後、和助は用があって出かけ、帰りが遅くなる。
気が付くと、彼は刑場におり、佐吉の亡霊が現れ、彼に無実を訴える。
和助は祟られているとわかってはいても、真実を明かせば殺されるのは必至で、黙っていようと決める。
しかし、結局、所司代の差し向けた忍者に襲われ、瀕死の傷を負う。
和助は佐助の霊の助けを借り、甚九郎の所に戻り、真実を明かす。
甚九郎は復讐のために佐吉とそっくりな像を作り、その像は刺客の忍者に噛みついて殺す。
翌日、甚九郎は忍者の死体のそばで所司代の悪事について人々に訴えるのだが…」
・谷川きよし「呪われた子孫」
「推理小説家の大月は、そこの主人がヨーロッパ旅行の間、屋敷を借りる。
ある夜、彼が執筆していると、何ものかに首を絞められ、後に引きずられる。
振り返っても誰もおらず訝っていると、笑い声が聞こえるが、それは鏡の置物からであった。
鏡の中には落武者のような髪型の男が映っており、百五十年前に殺された下野の国羽仁村の次郎と名乗る。
次郎は自分の肉体は恵林寺にある墓の下でミイラになっており、それを掘り出し、また、その際にはこの鏡を一緒に持って行くよう頼むと、鏡から彼の姿は消える。
大月は次郎に頼まれた通り、恵林寺に行き、次郎の墓を掘り返すと、彼のミイラが現れる。
ミイラは寺の中に安置され、翌日東京に運ぶ予定であったが、大月の持ってきた鏡がミイラのもとへ飛んでいき、ミイラは復活、行方不明となる。
五日後、東京にいる大月のもとにミイラが現れる。
ミイラは自分たちの一家を皆殺しにされた復讐のために星野村の名主、徳兵衛を殺そうとしていた。
大月は徳兵衛はもう死んでいると言っても、ミイラは聞く耳を持たない。
付いて来ないよう警告されてはいたが、真相を見極めるため、大月はミイラの後をつけると…」
橋本将次先生の短編が二編収録されております。(「谷川きよし」は橋本先生の別名義です。)
どちらも描き飛ばした感に溢れていて、細かいところでボロだらけですが、個人的には一つ見所がありました。
それはどちらの作品にも「ゾンビ」(狭義の「ロメロ・ゾンビ」でなく、広義の「甦った死体」の意味で使ってます)が出てくること。
特に「怪談石子詰」には北杜太郎・名義での「妖灯忌」(太平洋文庫)と同じシーン(首なし死体が自分の首に棒を刺し、その棒に自分の生首を刺して固定)があり、ちょっぴり感動しました。
恐らく、同じ頃に描かれたのでしょうが、どちらが先なのかは不明です。
・備考
ビニールカバー貼り付けあり。糸綴じあり。前後の見返し紙で補強。pp7〜10、pp15・16、pp21〜24、pp35・36、pp43・44、pp85・86、上隅や下隅にコマにかかる欠損。pp6・7、何かが挟まって剥げ。pp39・40、上部に折れあり。裂け・欠損・汚れ、多数。後ろの遊び紙にスタンプ。
2024年3月28・29日 ページ作成・執筆