黒田みのる
「少女エクソシスト@」(九重出版/1983年10月13日第一刷発行)
「少女エクソシストA」(九重出版/1983年11月22日第一刷発行)
「少女エクソシストB」(三学出版/1981年12月20日第一刷発行)
単行本@
・「第1章 おそろしい旅」
森山潤子のクラスに青山礼子という少女が転入してくる。
彼女は両親を亡くし、秋に北海道に行くまでの間、おじの家に厄介になる。
彼女にはどこか不思議な雰囲気があり、人のオーラや未来のことがわかると話す。
彼女は潤子が三連休に旅行に出ることを予感し、その旅をやめるよう警告する。
三連休の初日、潤子、弟の健、潤子の友人のゆかりは新幹線のホームに行く。
彼らから離れた場所に青山玲子の姿があり、三人を見守っていた。
三人は新幹線に乗ると、不気味な禿頭の男と相席となる。
だが、新幹線の外から礼子が「手かざしの業」をすると、男は席を立ち、二度と戻ってこなかった。
潤子達の目的地は、母方のおば夫婦の住む田舎町で、とある駅で降りる。
先程の奇妙な男も一緒に降りるが、それよりも、迎えに来てくれるはずのおばの姿がない。
潤子は一年前、母親と来た時の記憶を頼りに、おばの家に向かう。
ようやく見つけたおば夫婦の家は「よろず屋」という店であった。
おば夫婦は歓迎してくれるも、どこか様子がおかしい。
おば夫婦は潤子達を連れて、町はずれの古びた屋敷跡に行く。
その屋敷には朽ちかけた門と土塀しか残っておらず、門のそばには気持ちの悪い木が立っていた。
何故か、おば夫婦は昔の侍言葉になっており、その場に二十分もたたずむ。
陽が暮れるので、健がおじ夫婦に声をかけると、ふと我に返った様子で、その場から逃げ去り、家では布団にくるまって、ひどい怯えよう。
偶然、来店した客によると、理由はわからないが、月に一回、こんなふうになると言う。
そして、次の日の明け方、おじ夫婦は布団の中で死んでいた…。
・「第2.章 呪いのこえ」
旅行から帰ってから、潤子と健の様子がおかしくなる。
二人ともやけに凶暴になり、昔の侍言葉を使うようになる。
医者に診せても、全く原因はわからず、両親は途方に暮れる。
そんなある日、青山礼子が森山家を訪ねてくる。
彼女は潤子達を治せると両親に言うと、潤子と健が現れ、礼子に帰れと怒鳴る。
だが、礼子が「手かざしの業」をすると、二人は苦しみだして、逃げ出す。
礼子は子供部屋まで潤子達を追い詰め、潤子達に憑いている霊をあぶり出す。
その憑依霊は、母親の出身の中谷家の先祖に恨みを持つ侍であった…。
・「第3章 お寺が呼んでる」
夏休み、森山家の一家とゆかり、青山礼子の六人は母方の実家を訪れる。
おば夫婦の住んでいた店は空き家になっており、訝っていると、通りがかった人がお寺に行くよう勧める。
寺に行くと、中谷家の人々が何人も最近、亡くなったことがわかる。
その時、潤子と健が高笑いし始める。
礼子が二人を追うと、どんどん奥へと走っていき、鐘楼堂の所で、住職と一緒になる。
住職も中谷家と血のつながりがあった。
潤子達は古びた屋敷にある木に集まり、カラスの群れを操って、中谷家のゆかりの者とこの秘密を知った者を皆殺しにしようとする…。
単行本A
・「第1章 北の街で…」
秋、青山礼子は札幌に住む伯父(亡くなった母の兄)の田村夫婦のもとに身を寄せる。
寒い冬を越し、春、礼子は中学二年生になる。
ある日の放課後、運動場の片隅で、礼子はクラスメートの星野恵子に「手かざしの業」をする。
すると、恵子の様子がおかしくなり、彼女に憑依している霊が現れる。
その霊は吾一という江戸時代の百姓で、庄屋の娘のお京に捨てられただけでなく、殺し屋によって殺されていた。
吾一の怨霊は庄屋の一族を次々と殺していき、今、お京の生まれ変わりである恵子にとり憑いていたのである。
礼子により、憑依霊は一旦は静まったものの、この様子を遠くから見ていたクラスメート達は礼子を避けるようになる。
ある日の帰り道、恵子とその母親が礼子を待っていた。
二人は礼子に用があるらしく、車で星野の家に連れてくる。
礼子は恵子、母親、祖母に促され、二階の部屋に上がるが、そこで三人に襲われる。
三人に憑依している悪霊が邪魔者の礼子を殺そうとしたのであった。
礼子は「手かざしの業」で応戦し、家から逃げ出そうとする。
そこに、中学の担任教師と田村夫妻がやって来て…。
・「第2章 死んだ村へ…」
連休、礼子、担任教師、星野恵子とその母親の四人は、お京の故郷である村を訪れる。
その村は東北にあり、十文字村というが、今では廃村になっているらしい。
その村に近づくにつれ、恵子の様子がおかしくなる。
やけにこのあたりの地理に詳しく、十文字村に懐かしさを感じているようであった。
十文字村には一人だけ人が住んでおり、恵子を庄屋の屋敷に案内する。
恵子は前世の記憶が甦りつつあった。
しかし、庄屋の一族を根絶やしにしようとする憑依霊が恵子とその母を操り、皆を襲わせる…。
・「第3章 ゆくわ! 光のように……」
礼子は潤子と健の姉弟の幻を何度も視る。
姉弟の幻は礼子に助けを求めていた。
どうにも気になり、礼子は東京へ向かう。
森山家を訪れると、玄関は開けっ放しで、潤子達の靴はあるのに出てこない。
どこからか呻き声が聞こえ、礼子が声の聞こえる部屋に入ると、猿ぐつわをはめられ、拘束された姉弟の姿があった。
そして、これは姉弟の両親の仕業であった。
深夜零時、公園に呼び出された礼子は潤子達の両親と対峙するが…。
単行本B
・「第1章 夏の日に」
青山礼子は東京に住む父方の祖父に引き取られる。
祖父はk新聞社の社長、青山杉作であった。
ある日、礼子が友人達と歩いていると、橋の上をフラフラと歩いている青年を見かける。
青年は急に気味悪く笑うと、欄干を越え、川に身を投げる。
青年は流されるが、通りかかった若い男性が川に飛び込み、彼を助ける。
礼子は、彼が霊にとり憑かれていることを見抜き、その霊を鎮めると、青年は意識を取り戻す。
彼の名は岡本和彦(高校一年)で、漫画を買うために外に出たのだが、大きな木のある公園から先の記憶がなかった。
友人と別れた後、礼子はその公園まで足を運ぶ。
ここに、彼にとり憑いた霊の手掛かりがあるようなのだが…。
・「第二章 夏の夜に」
岡本和彦を助けた若者は、k新聞の記者、森田明であった。
礼子と森田明が岡本和彦の住む団地に向かうと、彼が血相を変えて、団地の入り口からとび出てくる。
彼は邪魔するやつは殺すと殺気立っており、二人は彼を離れた丘までおびき寄せる。
礼子が彼に「手かざしの業」をすると、浮き出てきた霊とは…?
・「第三章 夏の昼に」
数日後、礼子と森田明は、k新聞社社長の青山杉作に霊の話をする。
証拠の心霊写真を見せるものの、青山杉作は霊に対して全く理解を示さない。
更なる証拠集めのため、礼子と明は、あるビルの一室に人を呼び集める。
彼らは、岡本和彦にとり憑いている霊の親戚であった。
彼らの前で、礼子は和彦に「手かざしの業」をして、霊と会話をさせる。
その会話をテープに録るが、一人の男がそのテープを奪おうとして…。
・「第4章 夏の午後に」
礼子は、テープを奪おうとした男から人気のない森に呼び出される。
案の定、男には霊がとり憑いていて、邪魔な礼子に襲いかかる。
礼子は「手かざしの業」で応戦するのだが…。
また、憑依霊の魔手は森田明にも伸びる…。
「少女エクソシスト」は「心霊マンガ」の名作の一つです。
ただし、つのだじろう先生のようにおどろおどろしいものとは違い、少女向けのせいか、非常にユル〜いです。
間延びして緊張感に欠けた展開に加え、スッカスカの絵で、全く怖くはありませんが、「牧歌的」という評価もできるかも…。
とりあえず、「手かざしの業」(注1)で悪霊達と対等に戦うヒロインというのは当時(1975年/注2)、斬新だったのかもしれません。(アクション・シーンもばっちりです。)
この「手かざしの業」は相手に掌を向けるだけの業で、七面倒な呪文や護符、悪霊退治の専門道具、ややこしい魔法陣等、一切必要ありません。
その代わり、後ろにまわりこまれると即ピンチで、運動神経の良い人以外にはお勧めできない業であります。
・注1
黒田みのる漫画でおなじみの「手かざしの業」ですが、後によりパワーアップした「炎の業」を編み出しております。
あまり漫画で目にした記憶はありませんが…。
・注2
いまだちゃんと確認が取れておりませんが、「少女エクソシスト」は、みのり書房から出された「オリジナル・コミックス」が最初のようです。
ちなみに、「少女エクソシスト」は第一弾で、第二弾は鈴原研一郎先生「ようこそ!夢の世界へ」です。
2022年7月21・22・26・31日 ページ作成・執筆