いばら美喜「くろねこ」(1975年4月15日発行)



「志村洋二という青年が笹倉という温泉街を訪れる。
 そこで病気の療養をしているクラスメート、瀬川恵子を見舞うためであった。
 しかし、恵子の母親によると、恵子は脳の萎縮する病気で先は長くないと言う。
 藁にも縋る思いで、恵子の母親は、笹倉の近くに住む「お霊憑き(おりょうつき)」である祈祷師の老婆にも相談したものの、その老婆は行方がわからなくなっていた。
 ふとした偶然から、洋二はある家の土蔵の二階に閉じ込められている娘が、祈祷師の老婆であることを知る。
 祈祷師の老婆は、若返るため、「お霊憑き」を用いて、そこの家の娘と入れ替わったところを、家の主人により閉じ込められたのであった。
 洋二は、今は娘となった祈祷師の老婆を土蔵から脱出させるのに手を貸し、そのお礼に、恵子の病気を治してもらう。
 その方法とは、祈祷師の飼い猫「お霊」に二人の人間を舐めさせると、二人の状態が入れ替わるというものであった。
 小生意気な金持ちの娘と健康な身体を入れ替え、恵子は再び元気になるが、金持ちの娘は急死。
 洋二はこのことがばれるのではないかと危惧し、祈祷師を殺そうとするのだが…」

 ひばり書房黒枠期単行本で唯一の、いばら美喜先生の長編です。
 豪快なスプラッター描写の冴えており、斧で頭に叩き割る描写(注1)や出刃包丁が首や胸にざっくり刺さりまくる描写は重量感のあるもので、いばら美喜先生には珍しいかも。
 ストーリーも面白く、一気に読ませます。(相変わらず、登場人物は死にまくっています。)
 全体的にタイトな仕上がりではありますが、手描きの擬態語・擬音語がちょっぴり脱力気味。
 バスが止まる時の「きゅーッ」(p8)とか、ゴルフ・クラブの振られる時の「ひゅっ!」(p157)とか、普通はカタカナを使うところを平仮名で書いており、何か違和感があります。
 でも、まあ、それも味のうちでして、作品の価値を減ずることはありません。
 ヒバリ・ヒット・コミックスでの「化け猫少女」or「怪談!!黒猫」にて復刻されており、簡単に読めます。怪奇マンガ好きな人は読んでみてください。

2017年1月8日 ページ作成・執筆

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