古賀新一「くらやみ」(1973年11月30日発行)

 収録作品

・「くらやみ」
「ロックンローラーのサブは、同じアパートの三木真理に異常な執着を燃やしていた。
 彼女の影のように、その周囲に付きまとい、見つめ続けるが、彼女は全く彼の存在には気がつかない。
 ある日、サブは天井裏に上がる入り口を発見する。
 天井裏を這いずって、節穴から他の住人の赤裸々な姿を目の当たりにしているうちに、三木真理の部屋の天井に達する。
 夢中になって、彼女を節穴から視姦し、妄想を逞しくする。
 そのうちに、サブの周囲に自分にそっくりな男が出没するようになる…」
 江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」(昔読みましたが、内容失念…)をベースに、変態性欲の要素を大胆にミックスした傑作です。
 ひばり書房黒枠の中では、最もアダルト・テイストが濃いのではないでしょうか?
 復刻されておりますので、是非読んでいただきたいものです。

・「餓鬼」(「少年キング」に掲載されたはず)
「アパートの地下倉庫に閉じ込められた雄一と身籠った雌犬。
 これは、子供嫌いの継母が、事故を装って、雄一を衰弱死させるために目論んだことであった。
 母の助けを求める雄一に飢餓地獄が襲いかかる…」
 私が知る限り、史上最凶の漫画の一つです。
 罪悪感を一かけらも抱かない継母の徹底してドライな描写が、作品の陰惨さを際立たせております。
 ヒバリ・ヒット・コミックスでの「ヒルが吸いつく」にて再録されております。

・「クモ男」
「母を亡くし、天涯孤独の身となった少年、常夫。
 異常に内気で、蜘蛛しか友達のいない常夫はその現実を受け入れることができない。
 ある時、常夫は首に赤い蜘蛛のアザができていることに気付く。
 そのアザが消えると、彼の前に、小身体躯の醜い男が現れる。
 彼は常夫の親友と自称し、これから親代わりとなって面倒を見ると言うのだが…」
 貸本マンガの「蜘蛛男」の少年版なのでありましょうか。
 ラストもほぼ一緒でして、こちらの方も全く救いがありません…。
 「チチチとまた呼ぶ呪いの顔」(廣済堂)にて読むことができます。

・「蛇少女」
「ある村に東京からやって来た生物学者。
 彼は、沼の主と言われる巨大な蛇を捕まえる。
 そこへ、川田ユミという少女がお手伝いとして働くこととなる。
 不思議なことに、ユミの出現とともに、巨大な蛇は姿を消してしまう。
 雇われたユミは、学者の息子、秀夫に温かく接する。
 秀夫はもらい子であり、父親の虐待により、すっかりいじけてしまっていた。
 真夜中、ユミは遊ぼうと秀夫を研究室に誘い出す…」

 ひばり書房黒枠期に燦然と輝く、古賀新一先生の傑作作品集です。
 まず、どこをどう取っても、子供向けとは言いがたいところが素晴らしい!!
 特に、元祖ストーカーものと分身ものをミックスさせた「くらやみ」と、幼児虐待を描いた「餓鬼」は半世紀近く経った今現在読んでも、迫力は色褪せません。
 古賀新一先生の最もダークな側面を示しているように思います。

2016年10月5・6日 ページ作成・執筆

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