宮本ひかる「せむし狂女」(1972年1月31日発行)



「恵美子の兄嫁が産んだ赤ん坊は、せむしで、人間とは思えぬ醜悪な容貌であった。
 兄嫁はショックで倒れ、恵美子の家族は、育っても苦労をするだけと、赤ん坊をどう処理するか悩む。
 そんな家族の態度に業を煮やした恵美子は、赤ん坊を箱に詰め、遠く離れた彦根山に捨てに出かける。
 無惨にも、赤ん坊は蛇に襲われるが、恵美子は、赤ん坊を見捨てて、その場から逃げ去る。
 以降、恵美子の家では怪異が続発。
 恋人にも捨てられ、赤ん坊を殺したことを心から反省した恵美子は、赤ん坊の供養に励む。
 しかし、ある夜、恵美子の背中にこぶができ、そのこぶに赤ん坊の顔が浮き出てくる。
 赤ん坊に憑りつかれた恵美子は、赤ん坊の本当の父親のもとに向かうのだが…」

「これはひどい」(by「大冒険」(注1))と呟かずにはいられない、宮本ひかる先生の代表作の一つ。
 ひばり書房の黒枠期単行本の中でもトップに位置する「ひどさ」です。
 絵・ストーリーがどうのこうの言う前に、倫理的に大問題あり。
 世の中には、子供が欲しくても恵まれなかった人がいるのに、そういう人達の神経を逆撫でするようなマンガです。(まあ、普通の人が読むマンガではありませんが…。)
 んで、この赤ん坊の描写が凶悪極まりない!!
 ベビーシッター・ギン(注2)も裸足で逃げ出す「ひどさ」です。(産まれたてなのに、立派な歯が生えているのは何故?)

 こんなもん、山に捨てたために、当然、祟られて、いろいろとあるのですが、余りにも自業自得なので、ヒロインに全く感情移入ができません。
 そして、すったもんだの末、迎えるラストは「衝撃」の一言。
 心に突き刺さるラストなのでありますが、心に訴えかける要素は皆無で、偶然に通り魔に襲われたと言った感じの突き刺さり方です。
 と、ひどいマンガなのでありますが、こういうマンガにも「やけに長い電柱」(左下画像)や「普通のカラスに襲われているのに、何故か巨大化」(右下画像)といった心の和む描写がいくつかあります。(狙って出せる味ではないと思う…。)

 ちなみに、このマンガ、「人喰い少女」「たたり」といった作品で伝説となった、まちだ(町田)昌之先生(当時19歳)がアシスタントの一人として参加されてます。
 このマンガのアシスタント経験が後の怪奇マンガにつながったかも…と考えるのは、穿ち過ぎた意見でしょうか。
 そう考えると、こういうマンガにも存在意義があったのかもしれませんね…断言は控えますが…。

・注1
 初代プレイ・ステーション/セガ・サターンのクソゲーの筆頭として挙げられるソフトの一つ(未プレイ)。
 主人公のセリフ「これはひどい」が有名らしいですが、確認せずに、安直に使ってます。

・注2
 女装した男のベビーシッターが母親や子供達の悩みを解決していく、大和和紀先生のマンガです。
 単行本@〜Bまで読みましたが、非常に面白いです。(他の巻は未入手。)
 単行本Bの「女子高生ママ」の話と「モーリ君」の話は泣けます。

2016年12月30日 ページ作成・執筆

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