犬木加奈子「怪奇診察室@」(1997年6月26日1刷発行)

 精神科医、神輪(みわ)の診察室を訪れる少女達。
 彼女達が話す話の一つ一つに、人間の心の深淵を垣間見ることとなる…。

・「カルテ1 恋患い」(1993年「恐怖の館DX」Vol.6)
「神輪に恋心を訴える恋子。
 彼女の恋の相手は、彼女が空想の中で作り上げた青年であった。
 父親がDV野郎だったことが原因で彼女は陰気で無口な性格になり、また、異性への恐怖心が非常に強い。
 その性格は年を重ねるごとに強化され、彼女は小説や漫画といった二次元の世界にのめり込み、その過程で、彼女は、自分の理想とする男性像を作りあげていったのであった。
 彼女の恋する相手はあくまで空想上のものであったが、彼女は彼の居場所を突き止めたと神輪に報告する。
 彼女が言うには、それは左胸の中で、そこから彼の声が聞こえるという。
 急に苦しみ出した彼女は病院に運ばれるが、彼女の心臓に異変が起きていた…」

・「カルテ2 呪いの回線」(1993年「恐怖の館DX」Vol.7)
「三人の女学生、ノゾミ、カナエ、タマエの相談事は自分達が呪われているというものであった。
 三人は放課後、学校でコックリさんをする。
 受験について占うと、志望校にタマエだけが行けないと出たため、タマエは気分を害して、コックリさんをやめる。
 その帰り道、コックリさんに使った十円玉は手放さないといけないので、公衆電話で時報を聞いて使う。
 ところが、十円玉をいくら使っても戻って来て、手放せない。
 その呪いのせいか、毎夜、三時頃になると、彼女達に呪いの電話がかかってくるようになったのであった。
 神輪はこれがタマエの策略であることを見抜き、ノゾミとカナエを安心させる。
 タマエは神輪に、呪いの存在を証明すると息巻くのだが…」

・「カルテ3 いばら姫」(1993年「恐怖の館DX」Vol.8)
「母親に連れられて、華野つぼみという少女が神輪の診察室を訪れる。
 彼女の母親が再婚した6、7歳の頃から喋らなくなり、周囲への関心もなくしてしまったという。
 ただ、彼女は花に関することだけは興味や感情を示す。
 神輪は、彼女の診察を続けるうちに、残酷な真実に辿り着く。
 華野つぼみにとって温室とは…?」

・「カルテ4 早過ぎた埋葬」(1990年「ホラーハウス」11月・12月発行)
「中学校に入ると同時に、西野チルルは、父親の仕事の都合で、S県に引っ越す。
 それ以来、チルルはしばしば自分が誰かわからなくなり、溺死する少女の記憶に悩まされる。
 病院を訪れたチルルは、脳死で寝たきりの少女の病室を訪れ、発作を起こして気絶。
 この少女は東ミチルという名で、十五年前、川で溺れ、脳死状態になっていた。
 しかし、ミチルの母親は彼女の死を認めず、また、ミチルも普通なら一か月も持たないのに、年も取らず、生き続けてる。
 ミチルの謎を解明するために、病院を訪れていたオカルト研究者、神輪は、チルルはミチルの魂が転生したものではないかと考える。
 神輪は、ミチルの魂を救うために、チルルに逆光催眠療法を試みるが…」
 「ミチル転生」(「赤ずきんの森」収録)を改題したものです。

・「カルテ5 運命の恋人」(1991年「ホラーハウス」1月発行)
「大山キリ子は、自分の美貌を鼻にかけてる女子高生。
 彼女は、クラスメートから自分の未来の恋人を知る、占いの方法を教わる。
 新年になった瞬間、鏡に向かって、自分の名前と生年月日を三回と呪文を唱えれば、鏡にその姿が現れると言う。
 キリ子は大晦日の晩、この方法を試してみるが、現れたのは、想像とは全く違う三枚目。
 しかも、狙っていた男性は、友人の未来の恋人であった。
 結果に我慢できないキリ子は、鏡をだまして、未来の恋人を変えようとするのだが…」
 雑誌「ホラーハウス」での作品(「赤ずきんの森」収録)に加筆訂正を施して、再録したものです。

・「カルテ6 悪夢の教室」(1993年「恐怖の館DX」Vol.4)
「理子は小さい時から明るく、勉強もでき、先生からの信用も厚い、クラスの人気者。
 そんな彼女が、月曜日、学校に行くのが怖くて仕方がない。
 彼女はある月曜日、学校を途中で帰ってから、この恐怖症にかかった。
 彼女が月曜の学校で目にしたものとは…?
 そして、それが意味するものとは…?」

・「カルテ7 ドッペルベンガ―を見た少女」(1994年「恐怖の館DX」Vol.19)
「アイドルのオーディション会場に現れた、得体の知れない少女。
 彼女は記憶を失っており、ただ、スターになってテレビに出たいという願望だけが残っていた。
 あるプロダクションの女社長は、彼女に目を付け、双葉と名付けて、売り出す。
 彼女はとんとん拍子にスターへの階段を歩むが、彼女は時々、神隠しのように姿を消してしまう。
 女社長は双葉を神輪のもとへと連れて行くのだが…。
 彼女がスターになるために「捨てて来た」ものとは…?」

・「私の霊体験」(「サスペリア」1993年7月号)

 「怪奇診察室@」の文庫版です。
 ページの都合か、「ドッペルゲンガーを見た少女」が加えられ、「ホラー漫画家はこうして創られる」が「私の霊体験」に差し替えられております。

・備考
 中、汚れ多し。

2025年3月11日 ページ作成・執筆

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