井出知香恵「闇のレジェンド」(ギャグまん12月号増刊/1990年12月15日発行)
収録作品
・井出知香恵「エルドラド」
「麻百合は、入水自殺を図った知比呂という娘を助ける。
彼女から事情を聞くと、両親が彼女を顧みなくなったためと話す。
ことの発端は、彼女の両親は、南米にエルドラドの遺跡を捜しに行ったことであった。
二人はジャングルの奥地でそれらしき遺跡を見つけ、何かの小さな生き物を持って帰る。
以来、家の地下室でとても大切に育てているが、地下室の鍵は父親が厳重に保管し、知比呂はそのペットが何なのかは知らない。
麻百合は知比呂を助けると約束し、彼女の家に連れて行ってもらう。
そこで、麻百合は、知比呂の母が、植物人間だった自分を捨てた、実の母親だと気付くのだが…。
この家の地下室にいる「あの子」の正体とは…?」
・井出知香恵「メトセラ」
「樋野沙世子(22歳)は保育園の先生。
彼女は子供が好きであったが、保育園の先生になったのには別の理由があった。
彼女はエンゼル一族の娘で、メトセラ(聖書に出てくる969歳生きた人)の生まれ変わりを殺す宿命だと両親から教えられる。
メトセラは、堕天使ルシフェルが人間に化けたもので、エンゼル一族に処刑されたが、近い将来生まれかわると予言されていた。
ある日、かすみという少女がメトセラについて聞きに来る。
沙世子が訝っていると、かすみの背後を「悪魔の影」が見える。
意を決し、その夜、沙世子はかすみの家に忍び込み、就寝中の彼女に短剣を突き刺すのだが…」
・井出知香恵「オカルト・パーティ」
「インド人を曾祖父に持つ佐木真羽也(さき・まはや/29歳)。
彼は咲世という女性と結婚を考えているが、ある夜、奇妙な夢を見る。
夢の中で、ナラヤンラブという者が、彼の先祖に殺された憎しみで今も祟っており、もう一度バジラブ二世と同じことをして自分を供養するよう警告する。
気になり、図書館に行って、自分の先祖について調べようとすると、麻百合という少女が、バジラブ二世について書かれた本を持って来る。
本によると、バジラブ二世は約300年前の、インドのある地方の王様であった。
彼は即位後、奇怪な夢に悩まされるが、それは、父親が処刑したナラヤンラブという罪人が、呪いを受けたくなければ、10万の亡霊を呼んで大宴会を開いて、供養しろと迫る内容であった。
そして、王はナラヤンラブの要求に応え、その呪いを解き、一族の繁栄を約束させてと言う。
しかし、何故、今頃になってナラヤンラブが、よりによって真羽也に再供養を望むのかがわからない。
そこで、麻百合と真羽也はバジラブ二世の時代に飛ぶ。
過去を覗くと、パーティは成功だったが、ナラヤンラブが本当に望むものは用意できなかったらしい。
大宴会の目的とは…?
そして、ナラヤンラブの正体は…?」
・井出知香恵「サバト」
「橋口雄介(19歳/K大生)の妹、留衣は癌で早世する。
彼女の遺言は、遺灰を、どこか高いところから町の上に撒いて欲しいというものであった。
雄介が彼女の遺言を実行に移すと、彼の前に、魔女を名乗る麻百合という少女が現れる。
勇介が下に降りると、待っていたはずの恋人の沙川真世子の姿がない。
麻百合によると、妖魔の灰の直撃を受けて、心を支配されたと言う。
彼女に案内され、町に行くと、町の人々が夢遊状態でどこかに向かっていた。
麻百合は留衣の部屋で黒魔術の本を調べるが、その本は、多くの魔女を処刑した裁判官、ドランクルの著作であった。
しかも、ドランクルは、沙川真世子の遠い先祖で、本には資料として「アルケウス(精霊石)」が添付されていたらしい。
麻百合は、留衣がアルケウスを飲み、魔女としての力を手に入れたのではないか?と考える。
そこで、麻百合と雄介は急いで、町の人々が集まる、町はずれの城の廃墟に向かうと、そこではサバトが開かれていた。
儀式を司っていたのは…?」
・いしづよしひと「夜道の出来事/歩くガイコツ」
・井出知香恵「アポーツ」
「水泳部員の晃一は、プールでの練習中に意識を失い、何度も溺れる。
彼が泳いでいると、女性の声に誘われ、不思議な世界に行ってしまうのであった。
大きな瓦礫の向こうから「アポーツをくりかえして 私の中へ」という声が聞こえるが、一体どういう意味かわからない。
晃一を愛する有馬清子が悲しんでいると、魔女を名乗る麻百合という少女が現れる。
麻百合によると、プールができる前にあった洋館に住んでいた女性が何らかの鍵を握っているらしい。
その女性は逆崎不美という名で、莫大な資産を持ち、数多くの男と浮名を流していた。
実は、不美は魔界から魔法書を盗んでおり、一人の魔女が彼女を追うが、その洋館で忽然と消え、以来、消息不明となる。
しかし、麻百合は不美の気配を晃一から感じていた。
不美はどこに潜んでいるのか…?
そして、不美の目的は…?」
・井出知香恵「ゾロアスター」
「天野咲子(19歳)は美しい黒髪が特徴の美人。
彼女には、住木化学の御曹司、住木剛二という恋人がおり、大学卒業後に結婚する予定であった。
ある朝、彼女が目覚めると、何者かに髪と爪を短く切り取られていた。
すぐそばには麻百合という少女がいて、「ゾロアスター教に関係のある人間の仕業」と話す。
麻百合によると、咲子は、光の王、オルマズドを血をひく女神らしい。
そして、夜の王子、アーリマンは女神の誕生を阻止しようと目論み、女神の髪と爪を狙う。
女神の髪と爪を闇の祭壇に捧げれば、その人物は全身の肉が腐って、もがき苦しむことになるのであった。
だが、咲子の身体には何の異変もない。
彼女は前日出会った長髪の男性が怪しいと考え、その男性に詰め寄ると、剛二が彼を捕えに来る。
その男性が彼女の髪と爪を切り取って、どこかに隠したのだが、その理由とは…?」
・いしづよしひと「夜道の出来事/空飛ぶ人の巻」
・井出知香恵「ストラス」
「短大生の北見奈保は、ロンドン帰りで天文学・鉱物学の権威、柏原勇作の授業を受けている時に、彼の周りにフクロウの幻覚を視る。
更に、ある日の授業中、フクロウ以外に、黒豹、羽のある鹿の幻覚まで現れ、彼女は気絶。
彼女の男友達、徳永誠が柏原に事情を話すと、柏原は専門医を紹介する。
だが、紹介された医者も看護婦もどこか様子がおかしい。
訝りながら、誠が病院を後にしようとすると、麻百合という少女が宙に浮いており、「奈保さんがストラスの餌になってもいいの」と彼を叱咤する。
麻百合によると、柏原はストラスという悪魔で、医者と看護婦はストラスの部下、フュルフュールとフラウロスだという。
ストラスは地獄界の大王の座を巡って大王軍と争い、部下と共に人間界に逃げてきた。
そして、奈保には天才的なエクソシストの能力があり、その正体にいち早く気づいたのである。
奈保を守るため、麻百合と誠は彼女の病室に戻ると、柏原達が彼女を襲おうとしていた。
正体を現したストラス達を、奈保はその退魔力で追い払うのだが…」
・未城薪子「バンパイア・ショック」
「白鳥尚は色白の美少年。
彼は自分の八重歯を鏡で見て、自分は吸血鬼ではないかと考える。
いろいろと心当たりがあり、彼は自分が吸血鬼のように思えてくるのだが…」
この総集編は、単行本の「闇のレジェンドA」と単行本未収録の「ゼロアスター」「ストラス」を合わせた内容です。
2022年1月30日 ページ作成・執筆