岬マヤ「恐怖!呪いの鍾乳洞」(1988年1月15日第1刷発行)

「小学校六年の梢ナナ、原明子、真崎百合は三人組。
 三人は、山梨県しらかば高原で行われる、塾の夏期講習に参加する。
 宿舎に向かう途中、ナナが川辺に立ち寄ると、人面カエルから裏山の神社に近づかないよう忠告される。
 驚いたナナが友人達のもとに戻ると、気味の悪い老婆が急に草むらから現れる。
 老婆は三人を名指しして、塾の裏山にある古い神社を訪ねるよう勧めて、姿を消す。
 さて、塾の宿舎には塾生や先生が集まり、夏期講習が始まる。
 生徒達はキャンプのような生活に大はしゃぎだが、ナナの心は晴れない。
 ナナは、明子と百合と共に、神社を調べに行こうとすると、三人の前に、奇怪な黒髪の女が現れる。
 女が三人に「地獄に送ってあげる」と物騒なことを告げて立ち去るが、その直後、今度は人面猫が姿を現わす。
 しかし、人面猫(♂/ネクタイ付き)は奇怪な女について話そうとした矢先に、額を矢で射られ、死んでしまう。
 翌日、放課後、三人は、中山先生の引率で、神社に赴く。
 そこには、奇怪な老婆と、黒髪の女がいた。
 ナメクジを生きたまま食べる、黒髪の女にドン引きしている間に、百合が行方不明になる。
 更に、宿舎の管理人夫婦の行方もわからず、宿舎では大騒ぎ。
 校長は講習を中止させ、自分と中山先生を残し、他は山を降りさせる。
 ナナと明子は百合の捜索に協力したいと訴え、校長、中山を加えた四人は神社に向かう。
 そこで明らかになる、黒髪の女の恐ろしい正体とは…?」

 よく知られている話ですが、岬マヤ先生はエロ劇画家の「石井まさみ」先生であります。
 立風書房には、作品を二冊、残しておりまして、一般的には、「エロ」なムードが濃厚な一作目、「恐怖!ゾンビのいけにえ」の方が有名なようです。
 ですが、二冊目の「恐怖!呪いの鍾乳洞」も見逃せません!
 あくまで私見ですが、メチャクチャ「いばら美喜」テイストの作品となっております。
 鬼女の雰囲気や、ザックリかつ強引なストーリーの進め方なんか共通するものを感じるのですが、まあ、そこまで確信があるわけではありません。
 また、作品では、泉鏡花「高野聖」(注1)でお馴染みの「人間の動物化」を扱っております。
 これが馬、猫といったあたりに変えられるのはまだ理解できるのですが、蛙、山椒魚、ネズミ、コウモリ、モグラと、B級モンスター映画のようなノリになっていくのが、この作品最大の魅力でありましょう。
 ヒロインが「マダラカマドウマ」に変えられるシーンは一見の価値があります。(説明しないとわからないような虫にわざわざ変えんでも…)
 個人的には、「恐怖!ゾンビのいけにえ」よりも好きです。

・注1
 海外にも似た話はありまして、ジョン・コリア「葦毛の馬の美女」という短編があります。
 「ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリア」(ちくま文庫/1989年3月28日発行)収録。
 ジョン・コリアも読み返したいと思いつつ、いまだ果たせないままです。

2018年3月7・8日 ページ作成・執筆

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