小室孝太郎「命」
(1979年1月30日初版発行)

「昭和三十七年(1962年)二月五日。
 東京のある産院で、天王寺大介の妻、博子は男児を出産する。
 出産する前夜、博子は不思議な体験をしていた。
 前日から入院した彼女が真夜中に目を覚ますと、窓ガラスがカーテン越しに真っ赤に染まる。
 窓を開けると、炎のようなものが部屋に飛び込んできて、彼女を包む。
 炎は少しも熱くはなく、彼女は深い感動に包まれたまま、炎が身体に入って消えるのを彼女は感じる。
 それからしばらくして、陣痛が始まったのであった。
 だが、出産した夜、東京では産院が片端から何者かに襲撃され、赤ん坊が皆殺しにされる。
 博子が入院していた産院も襲われ、大介が駆けつけた時には、火に包まれていた。
 赤ん坊は絶望的と思われたが、保育室の赤ん坊が夫婦の赤ん坊を覆い、助かる。
 その後、夫婦はこの赤ん坊に「命(みこと)」と名付ける。
 同じ頃、山中で修行中の僧、知念は普賢菩薩から使命を受ける。
 それは、日本に変化法身が産まれたため、この子を邪悪な者から守るというものであった。
 普賢菩薩から授かった三鈷杵(さんこしょ)に導かれ、彼は山を降りる。
 赤ん坊の命を狙っているのは、悪魔の使い達で、様々な術を用いて、天王寺一家を襲う。
 知念は、一家を東京から脱出させるが、父親は敵の手に渡ってしまう。
 そして、十六年後。
 命と、大魔女が産んだ「魔王の化身」である哮(たける)の因縁の戦いが再び始まる…」

 「伝奇 meets 精神世界」な名作です。
 ただし、小室孝太郎先生は大長編の構想の下、挑んだものの、いろいろな状況故に、構想の三分の一も叶わず、打ち切り(?)になった不遇の作品です。
 そのため、終盤はかなり駆け足で、ラストはぶっちゃけ、よくわかりません。
 それでも、「密教 vs 黒魔術」のバトル等、作者のポテンシャルの高さはガンガン伝わってきます。
 再評価が望まれます。

2022年9月1日 ページ作成・執筆

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