亜月亮「都市伝説H―紫の鏡―」(2012年8月29日第1刷発行)

 収録作品

・「都市伝説―山―」(「ザ・マーガレット」2011年10月号)
「花純、美里、アキオ、杉はサークル仲間。
 夏、彼らはドライブに行くが、花純はある山を希望する。
 その山の頂上にあるスキー場では前の冬に花純の恋人の斉木優斗が行方不明になっていた。
 ドライブの途中、彼らは大雨にあい、車がぬかるみにはまってしまう。
 近くに杉の家の別荘があり、彼らはそこに避難するが、ここは電気すら通っておらず、携帯電話も圏外であった。
 実は、この別荘はもともとは孤立しておらず、近くに「×沢村」という集落があった。
 しかし、ある夜、一人の若い村人が村人を皆殺しにして、家々に火をつけて、別荘以外、村は全滅したという。
 ちなみに、犯人の犯行理由は不明なままで、犯人は山の中に逃げ込んだまま、いまだに捕まっていなかった。
 そんな話をいろいろとしていると、何者かがドアを外から叩き、窓から中を覗き込んでいる。
 彼らはこの別荘で無事、朝を迎えることができるのであろうか…?」

・「都市伝説―高額アルバイト―」(「ザ・マーガレット」2011年12月号)
「円香は受験生。
 彼女は家庭教師のシンジにクリスマス・プレゼントを買うために、単発でがっぽり稼げるバイトを探していた。
 ある日、学校で蘭々という女子生徒が彼女に声をかけてくる。
 蘭々は彼氏の紹介で一日数万円のモニターのバイトがあると話し、円香と一緒に説明会に行く。
 バイトの主催者は蘭々の彼氏のリョウで、バイトの内容は一晩、豪華客船で東京湾をクルージングし、そのディナークルーズをモニターすることであった。
 バイト当日、円香は蘭々と共にクルーズ船に乗り込む。
 華麗な設備に豪華な料理で円香はルンルン。
 だが、デッキで蘭々と話をしていた時、船が東京湾から離れていっているように思う。
 二人はリョウのもとへと向かうのだが…」

・「都市伝説―SNS―」(「ザ・マーガレット」2012年4月号)
「詩衣奈は趣味は新人バンドの追っかけ。
 彼女はあるSNSのコミュニティで知り合った「りおん」という娘と実際に会う。
 SNSは詐欺が多いと警戒をしていたものの、りおんはプロフィールの写真通りで、リボンやロリータファッションの似合う可愛い娘。
 二人は音楽の趣味が一緒ですぐに意気投合し、バンドのライブを楽しむ。
 しかし、りおんの好きなバンドに対する情熱は常軌を逸していて、どうもついていけない。
 詩衣奈は彼女と距離を取ろうとするのだが…」

・「都市伝説―紫の鏡―」(「ザ・マーガレット」2012年8月号)
「有紗は鏡恐怖症。
 小学生の頃、友人のキヨと京香と共に合わせ鏡の都市伝説を確かめた時、鏡の中の13番目の自分に笑いかけられたことが原因で、以来、彼女は長い間、鏡を見つめることができなかった。
 だが、さすがに高校二年生にもなって、鏡が怖いでは先が思いやられる。
 そこである時、学校の家庭科室にある「紫の鏡」を勇気を出して見てみる。
 この「紫の鏡」は十年前ぐらいに女子生徒が全身紫色になって鏡の前で死んでいたという噂があり、常にカーテンで覆われていた。
 でも、実際は普通の鏡で、有紗は安堵するものの、次の瞬間、鏡の中から紫色の腕が伸び、彼女の腕を掴む。
 紫の腕はすぐに消え、掴まれた部分は紫色のアザになっていた。
 病院ではアレルギーと診断されるが、学校では「紫の鏡の呪い」の噂が広まる。
 この呪いは鏡によって伝われ、皮膚が紫に変色してしまうというのだが…」

 亜月亮先生の「都市伝説」シリーズの最終巻です。
 「高額アルバイト」は「リフレイン」(A巻収録)の後日譚で、大学生になったシンジの姿を見ることができます。
 「SNS」には金槌を振り回して暴れる娘が登場し、法政大学の事件のニュースの後にこの紹介文を執筆したので、タイムリーに感じました。(そういう問題ではない…。)
 この単行本の個人的ベストは「山」。
 山に関するいろいろな都市伝説や怪奇譚の要素をうまく取り入れ、うまくまとめ上げております。

2025年1月10日 ページ作成・執筆

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