好美のぼる「呪いの盲猫」(1979年6月1日初版発行)
「ミツ子は盲目の少女。
父親を失い、母親は病院のまかないを、祖母は内職で、どうにか生活していた。
ミツ子は盲目であったが、勘が鋭く、大抵のことは何でもこなしてしまう。
それは、ミツ子の飼い猫のクロのおかげであった。
クロが子猫だった頃、母猫が死んで、衰弱死するところを、ミツ子は甲斐甲斐しく世話をして、命を救う。
母猫の霊がミツ子に感謝して、以降、ミツ子はクロと意思の疎通ができるようになり、クロはミツ子の目となり、耳となり、ミツ子一家を支えていたのである。
ある日、祖母が轢き逃げされて、あえなく死亡。
クロは一匹で祖母を轢き逃げしたドライバーを突き止めるが、そのドライバーの投げた石で致命傷を負ってしまう…」
何ちゅ〜か、スゴいマンガです。
個人的には、この作品の一月前に出された「呪いの学園」よりも衝撃度は上でした。
まず、タイトルからもわかりますように、有名な差別用語(注1)の「盲(めくら)」をばっちり使っております。
それだけならまだしも、不良少女達がミツ子をリンチにかけようとするシーン(pp61〜68)はヤバ過ぎです。(しかも、石打ちにしようとする嫌らしさ。)
しかし、クロと共に力強く生きるミツ子…とちょっぴり感動したのも束の間、貧乏人には容赦がないのが「怪奇マンガ」の常!!(現実もそうです。)
後半から不幸の機銃掃射が待ち構えております。
ネタバレでありますが、祖母は轢き逃げ、母親は冤罪を着せられての自殺と、なかなか壮絶です。
それでもヒロインらしく、クロの霊とともに健気にもミツ子は真犯人を突き止めようとするのでありますが、その際に真犯人を脅かす描写があまりに「へっぽこぽ〜ん」なのです。
猫少女になって脅かしたり、真犯人の身体の一部を猫にしてしまう…と書くと、何か凄そうですが、絵で見ると、「とほほ…」です。
いやあ、身体の一部を猫にされた男が人々の笑いものになる描写(pp162〜pp192)は、すんません、笑ってしまいます。
というワケで、シリアスかつテキト〜、イノセントなのに世知辛く、ヘビーでありながらユーモラスと相反する要素が同居する、不思議な「好美ワールド」は相変わらず健在!!
もっと詳しいことが知りたい方は「岩井の本棚「マンガけもの道」第26回」を参考にされてください。(と言うか、私の駄文より遥かに内容が濃いので、そちらだけ読んでもらえればいいです。)
・注1
何を基準にして「差別」と判断するのか、不勉強のため、よくわかりませんが…。
・備考
カバー痛み、前後の袖の部分が取れかけ、背表紙上部に痛み。乱丁あり(p19→p21→p20→p22)
2016年7月9日 ページ作成・執筆