長田ノオト「実験王」(1996年12月23日第1刷発行)

 収録作品

・「探偵漫画 実験王」
「私立探偵の江戸川乱砂と助手の鳩山カノン。
 二人は南方という男性から呼ばれ、その邸を訪れる。
 南方は「実験王」より一人娘の恵を誘拐するとの予告状を受け取っていた。
 「実験王」は先日も一人の少年を誘拐した悪党で、犯行の指定時刻は本日の正午から日没まで。
 乱砂は非番の警官を四人呼んで、玄関を固め、二階の書斎には、恵、秘書の佐々木、江戸川乱砂の三人、そして、書斎の外には南方が陣取る。
 邸の背後は海に面した断崖絶壁で、これなら、たとえ実験王でも侵入は容易ではないと思われた。
 だが、警官の一人が腕を撃たれ、江戸川乱砂が様子を見に行った隙に、恵と秘書の佐々木は姿を消す。
 実は、実験王は、佐々木がトイレに行った隙に、彼に変装していたのであった。
 実験王にさらわれた恵の運命は…?
 そして、実験王の目的とは…?」

・「探偵漫画 実験王 怪奇!!少女島:第一章 探索」
「鳩山カノンは山本春子という少女から江戸川乱砂探偵に会わせてと頼まれる。
 彼女の姉、山本むつみ(15歳)は三日前から行方不明で、実験王の関与が疑われていた。
 だが、江戸川乱砂は今、新潟に出張のため、戸山ヶ原小学校探偵部(鳩山カノン、陽一、学の三人)は独自に調査を開始。
 カノンの変装をした陽一が、むつみが通った道を調べていると、物陰から美少女の死体が投げ出される。
 死体の少女はむつみらしく、怪しい男が死体を抱えて、倉庫の中に入って行く。
 皆に知らせる余裕はなく、陽一は男を尾行するが、逆に幽閉されてしまう。
 そこに江戸川探偵が現われ、二人で部屋を調べると、誘拐されたむつみが水槽の中で踊っていた。
 そして、怪しい男の正体は、実験王の助手、月彦であった。
 これで一件落着かと思いきや…」

・「探偵漫画 実験王 怪奇!!少女島:第ニ章 潜入」
「実験王の本拠地、少女島。
 ここは「気象変動装置」により様々な季節の下で、人魚少女、蛾少女、妖精少女といった改造少女たちの棲む「理想郷」であった。
 実験王によれば、カノンの存在によって「少女島」は完璧となるというのだが…。
 その頃、陽一の残した暗号文を見て、カノンと学は人力飛行機で少女島に向かいつつあった…」

・「探偵漫画 実験王 怪奇!!少女島:第三章 危機」
「月彦は実験王を父親として慕う。
 彼は、死んだ15歳の少女から取り出された卵子と実験王の精子を結合させ、人工用水の中で一年間、育てられ、この世に出たのであった。
 だが、実験王の愛情は鳩山カノンにのみ向けられており、月彦は嫉妬に苦しむ。
 そんな折、陽一をカノンと間違えてさらってしまったことで、実験王から折檻を受ける。
 更に、陽一に逃げられ、月彦は彼を必死に追うのだが…。
 その頃、カノンと学は少女島に潜入していた。
 洞窟を進むと、そこには幾つもの怪物の死体が…」

・「探偵漫画 実験王 怪奇!!少女島:終章 脱出」
「月彦はカノンへの嫉妬をむき出しにして、その顔を「オキシジェン・デストロイヤー」に浸けようとする。
 学はカノンを助けようとするも、そこに実験王が現われ、人質に取られてしまう。
 一方の陽一は「気象変動制御室」に逃げ込み、気象変動装置をめちゃくちゃに破壊する。
 カノン達、そして、少女島の運命は…?」

・「月光虫」
「恋人の陽昇リルの死。
 夜の公園で並木ケンヂは彼女の死を嘆く。
 彼は、彼女の死の前にキスをしており、彼女の病気が移ったのではないかと不安に思う。
 そこに「山王寺月彦」という若い医者が現れ、彼の学校での身体検査のカルテを見たと彼を診察する。
 医者はケンヂが「不治の病」にかかっており、11月30日の深夜0時に死ぬと宣告する。
 残された時間をケンヂは好き放題に過ごすが、宣告された時刻が来ても、死ぬ様子がない。
 このまま家に帰るわけにはいかず、名刺にあった医師の家を訪れる。
 そこは廃墟同然の教会であった。
 奥の部屋で、ケンヂは再び診察を受けると、月彦は「誤診」だったと明かす。
 月彦はケンヂを匿う旨を申し出て、ケンヂは彼の研究を手伝うこととなる。
 まず、ケンヂは「美しい少年少女」を合意の上、ここに招待するよう頼まれるのだが…」

・「少女探偵カノン 孤島の白い影」(シナリオ協力・奥仁葵)
「日本の南にある常夏の島、黒根島。
 冬休みを利用して、中学生の鳩山カノンと千草は、千草のおじのいるこの島を訪れる。
 島には人家はおじの屋敷しかなく、二人をメイドのイルマが迎え入れる。
 だが、カノンは窓にもう一人少女らしき人物の姿を見ていた。
 おじが二人の前に現れるが、彼はまだ25歳の青年で、ドイツの医大を卒業した後、この島の別荘で趣味の生物の実験をしているという。
 カノンが千草にもう一人のメイドの話をすると、千草はここにはイルマとおじしかいないと話す。
 怯えた千草のために、カノンは彼女と一緒に寝るが、千草が目を覚ますと、ベッドにカノンの姿がない。
 千草が捜しに行くと、カノンが廊下に通れている。
 カノンの身体は粘液のようなものでべとべとであった。
 カノンの話によると、窓に見えた人物が気になり、夜中、その窓の部屋に行く。
 部屋には鍵がかかっていて入れなかったが、地下室の階段の前になめくじのような跡があることに気づく。
 すると、何かが下から上がってくる。
 それは上半身は千草のようだったのだが…。
 この屋敷の秘密とは…?」

 レトロかつ耽美な雰囲気のある探偵漫画で、長田ノオト先生の代表作の一つです。
 「実験王」シリーズはこの一冊である程度、網羅されているのではないでしょうか?
「探偵漫画 実験王」はマイコミックス(東京三世社)からの再録で、それにサイド・ストーリーを二編加えております。
 内容的には、江戸川乱歩の「怪人二十面相」シリーズと「パノラマ島奇譚」に多大な影響を受けているように思います。
 「月光虫」は実験王の息子の月彦が主人公で、「並木ケンヂ」の名は「大槻ケンヂ」さんから採られているんでしょうね。(「月光蟲」のアルバムは長田先生の大のお気に入りだったのかも。)
 また、「少女探偵カノン」は探偵ものかと思いきや、実は「モンスターもの」です。(もちろん、モンスターが出てくれば、ちゃんとマッド・サイエンティストも出て来ております。)

2023年3月22日/4月8・12・13日 ページ作成・執筆
2023年8月8日 加筆訂正

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