美内すずえ「美内すずえコレクション 黒の書 妖鬼妃伝」(2017年8月26日第1刷発行)

 収録作品

「妖鬼妃伝」
「黒百合の系図」
・「ひばり鳴く朝」(「別冊マーガレット 1971年6月号」初出)
「若き科学者、テレニスはリード博士の研究を引き継ぐことになる。
 その極秘の研究は、エリという名の少女を観察することであった。
 十三年前、両親を亡くした、赤ん坊のエリは、リード博士に引き取られ、以来、秘密の部屋に監禁されたまま、成長する。
 そこで、エリは外界との接触を一切断たれ、その状態で人間がどうなるかという人体実験のモルモットにされていた。
 テレニスは余りに非人道的な実験に苦悩し、博士の言いつけを破って、エリに人間の心を教えようとするのだが…」

 怪奇マンガの名編を二つ(カラーページ付)と、恐ろしくヘビーな短編、更に、作者による、怒涛のセルフ解説まで付いている、豪華な一冊です。
 個人的には、ヤバ過ぎる「ひばり鳴く朝」と「セルフ解説」が興味深くありました。
 「ひばり鳴く朝」は故・星新一の「ボッコちゃん」中の一編(タイトル忘れ/金持ちが少女を飼っていたが、金持ちの死後、召使いが世話しようとして…という話)を彷彿させる内容ですが、「人間性を剥奪されていた少女が人間であることを取り戻す」というテーマで、意外と重い内容です。(40年前以上の作品とは思えない。)
 また、作者によるセルフ解説は、二万字(400字詰め原稿用紙50枚)というボリュームで、普通に読んでも、15分程度はかかります。
 勿論、作者本人によるものですから、中身も濃く、読んでるだけで、美内すずえ先生のオーラがムンムン伝わってきます。
 まだまだお元気な様子なので、「ガラスの仮面」「アマテラス」の完結も夢ではないでしょう。(セルフ解説で、完結させると断言しております。)
 「マンガの神様」の御加護がありますように。

 この本は定価が「1500円+税」ですが、怪奇マンガ好きの人なら、充分、元は取れると思います。
 こういった形で、様々な漫画家さんの過去の名作にスポットライトが当てられることを切に願っております。

2018年4月11日 ページ作成・執筆

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