池川伸治「冷血・17才」(230円/1968年10月7日完成)

「世田谷にある屋敷。
 そこに住むのは資産家の夫婦と長女の明子、長男のケン坊、それに、住み込みの新井と明男、女中の七人。
 何の変哲もないように見える屋敷であったが、そこに住む人々の愛憎が渦巻き、様々な思惑が交錯する。
 明子と仲のいい新井に嫉妬し、彼を夢遊病者に仕立て上げようとする明男。
 娘をエサにして、明男を協力させ、主人の殺害を計画する妻。
 誰とも口をきこうとせずに、黙々と身辺整理を行う主人。
 屋敷でただ一人、明るくほがらかな明子。
 ケン坊の謎の死の後、エゴと欲にまみれた人々の行きつく果ては…?」

 怪奇ものというより、奇妙な味のサスペンス・ドラマです。
 と言っても、サスペンスな雰囲気はあまりなく、個人的には、不条理というか、現実離れした印象があります。
 後記にて、作者は「不信」というものについて描いてみたと記してあります。
 お互いを信じ合えない人間達が互いに殺し合ったり、孤独に死んでいく…という感じで描こうとしたのかもしれませんが、実際のところは、いまいち掴みどころのない(悪く言うと、サスペンスとしても人間ドラマとしても中途半端な)作品となっているように思います。
 でも、まあ、この「奇妙な味」を好む人もいるかもしれませんね。

 あと、巻末には、川辺フジオ先生による「太陽プロ員の くせ・特技・きらいな食物好きな食べ物 特別公開」が3ページ載ってます。
 個人的には、本編よりも面白かったです。

 ちなみに、本編の合間に「夢の恐怖」というコラムがありまして、池川伸治先生は人を殺す夢を見て、恐ろしさでうなされた旨、書いてます。
 もしかして、夢の中で殺したのは、恋敵だった、あの御方?

・備考
 ビニールカバー貼りつき。ビニールカバーの上に「池川伸」と書き込みあり。p24、目立つシミあり。後ろの遊び紙に貸出票貼り付け。

2017年1月30・31日 ページ作成・執筆
 

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