谷ゆきお「呪い腕」(220円/1967年6月頃完成)
「啓一、妹の美津子、ガールフレンドのあす子の三人は山にドライブに出かける。
その帰り道、啓一は夜道をとばし、カーブの向こうにいる娘に気付かず、彼女をはねる。
娘はケガのために目が見えなくなり、ふらふらと線路に歩いていく。
そこに電車に来て、彼女の身体はバラバラになり、三人はこの場から逃げ出す。
啓一は美津子とあす子にこの件を口止めするが、三人とも気が気でない。
しかも、美津子とあす子の前にこの娘のバラバラ幽霊が現れる。
幽霊は啓一のところにも出て、三人を追いつめていく。
また、娘の幽霊は何かを捜しているようなのだが…」
谷ゆきお先生が「交通戦争」に警鐘を鳴らした作品です。(注1)
奇想よりも、腕だけの幽霊の恐怖を前面に押し出しており、珍しく本格的な怪奇ものです。(腕だけの幽霊には恐らく、何らかの怪談に元ネタがありそうです。)
あと、本作品最大の謎は所々、浅丘ルリ先生のタッチになっていることです。(参考画像を載せておりますが、最終ページ等ありますので、ネタばれが気にならない方のみクリック→@A)
谷先生は浅丘先生と東京漫画出版社ではレーベル・メイトでしたので(注2)、お二人の間で何らかの交流があり、この作品の時には浅丘先生がアシスタントに来ていたのでしょうか?
本作品がストレートな怪奇もので、ラストがぬるめなのはそれが原因…?
・注1
「交通戦争」を扱った作品はいろいろありますが、とりあえず、念頭に浮かんだのは望月みさお先生の怪作「ゆうれい自動車の母」だったりします…。
・注2
更に、貸本時代の終焉後、お二人とも、青年劇画誌や三流エロ漫画雑誌に進出しております。
浅丘ルリ先生はその際、ペンネームを浅丘譲に変えております。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。p110、p122、色塗りあり。後ろの遊び紙に貸本店のスタンプと書き込みあり。
2023年10月3日 ページ作成・執筆