西たけろう「死神少女」(220円)

「雨の日の夜遅く、小川セツ子は、空き家の屋敷に明かりが灯っているのに気が付く。
 不思議に思い、門の鉄格子に近づくと、鉄格子の向こうに恐竜のような怪物が現れ、セツ子に向かって、鋭い爪のついた手を伸ばす。
 驚いて、逃げ出し、家族にこのことを話すが、誰も信じてくれない。
 しかし、数日後、下校途中の小学生がその屋敷の前で、かき消すように失踪する事件が起きる。
 警察の捜査で、鍵のかかった屋敷の中から、その子の長靴と、裏庭に恐竜のものを思わせる巨大な足跡が発見されるが、それ以上のことは全くわからない。
 失踪事件から数日後、大金持ちがその屋敷を買ったという噂が広がる。
 その屋敷に、人間とは思えない、恐ろしい顔をした女性と、美しい少女が住んでいることをセツ子は知る。
 しかも、その少女は、セツ子の教室に転入してきた九鬼千子であった。
 程なくして、その屋敷に男性が訪れてくる。
 ふとしたことで、セツ子はこの男性の口に牙がびっしり生えているのを目にしてしまう。
 襲われそうになったところを、九鬼千子に助けられたものの、この男性も屋敷の住民と何か関係があるらしい。
 屋敷に潜む秘密とは…?
 屋敷に住む三人は一体何者なのだろうか…?」

   西先生の貸本怪奇マンガの中で、最も人気の高い一冊でありましょう。
 「まんだらけZENBU創刊号」(1998年12月20日発行/p66)にて紹介もされております。
 気になっている方ももしかしたら、いるかもしれませんので、恐竜の正体をバラシておきます。
 実は、「27世紀の世界の死刑ということは変身機によって色々の動物に変えられて、数万年数億年前の昔へ送られること」(p90)で、彼らの正体は、20世紀に逃げ込んできた、恐竜に変えられた死刑囚なのでありました。
 27世紀に至っても、ちっとも人道的でない死刑方法等、いろいろ引っかかることはありますが、発想がぶっ飛んでおります。(注1)
 約半世紀後の今、読んでも、なかなか面白いです。
 恐竜人間の描写ばかりが取り沙汰されておりますが、怪しさ満点の九鬼千子もいい味出していると思います。

・注1
 似たような内容のSF中編に、ロバート・シルヴァーバーグ「ホークスビル収容所」という作品があります。
 紀元前十億年の後期カンブリア期に送られた、思想犯達の生活を描いた作品で、非常に面白い作品ですが、もうちょっとボリュームが欲しかったかも…。
 この作品が描かれたのが、恐らく、1968年前後。(ドナルド・A・ウォルハイム&テリー・カー編「ワールズ・ベスト1968 ホークスビル収容所」(ハヤカワ文庫/1980年1月15日発行)に収録されているため。)
 西たけろう先生がこの作品を読んでいたかどうかはわかりませんが、そんなことはどうでもいいのです。
 過去に送るんだから、恐竜にしちゃえ!!という発想が全てだと個人的には思っています。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。小口研磨によりちょっぴり小さめ。pp1・2、裂けあり。読み癖あり・全体的に小裂け。小欠損、目立つシミ多し。pp91・92、上部に折れ痕あり。pp93・94、111〜118、ページ中央に縦に走る折れ痕あり

2015年10月22日 ページ作成・執筆
2016年7月3日 加筆訂正

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