池川伸治「私の中に猫がすむ」(230円/1968年4月24日完成)
「直樹は公園で美しい少女を見かけるが、彼女は突如、塵と化してしまう。
このことを話しても誰も信じない中、研究所員の山内一也のみが熱心にその話に耳を傾ける。
その後、山内は一週間、研究所を欠勤し、直樹は彼の様子を見に、その家を訪ねる。
だが、家には山内の姿はなく、彼の母親と妹(養女)のエリがいたが、妹は、公園で目にした少女であった。
念のため、彼の部屋を覗くと、中は土だらけ。
噂では、彼はゴーレム(ユダヤの泥人形)作りに熱中していたらしい。
その夜、直樹の部屋を、エリがひそかに訪ねる。
彼女は直樹に山内のノートを見せ、直樹にゴーレムを作るよう勧める。
山内のノートによると、山内の家系は代々、ゴーレムを作ってきたという。
エリと共に、直樹はゴーレムを作りあげ、呪文を唱えると、実際にゴーレムは動き出す。
直樹は、ゴーレムが動き出す理由を科学的に突き止めようとするが、恐ろしい事実を知る。
山内はゴーレムの実験の際、本物の人間のように見えるゴーレムを作ってしまっていたのである。
そのゴーレムがエリであることを知った時、エリは直樹にある願い事をするのだが…」
「ゴーレム」はユダヤの泥人形で、呪文を唱えると、動いたり、塵に還ったりするようなのですが、詳しいことは知りません。(注1)
ともあれ、この作品は「人間そっくりのゴーレム」というSF的とも言える要素を導入して、P・K・ディックのような雰囲気も若干、感じられます。(注2)
ただし、毎度のことながら、ストーリーのまとまりが悪く、釈然としないところもかなり見受けられます。
んで、イマイチ話に乗れないまま、クライマックスになだれ込み、ゴーレム達が大暴れ。
そして、迎えるラストは、ハーシェル・ゴードン・ルイス「血の魔術師」を彷彿させるかも…。
いろいろと欠点はありますが、妙に気になるところが多い、不思議な作品です。
ちなみに、「私の中に猫がすむ」のタイトルは全く内容と関係がありません。
これだけ同じことが重なると、狙ってやっていたのかもしれません。(でも、そこまで考えが至っていなかったという可能性の方が高い。)
・注1
大学生の頃、グスタフ・マイリンクの「ゴーレム」に挑戦しましたが、あっさり挫折しました。何を言っているのか、さっぱりわからんかった。
・注2
後記に、京・速氏の原作をもとに描かれたと書かれているが、原作がどのようなものかは不明。
・備考
カバー貼り付け。糸綴じあり。シミあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2019年2月28日 ページ作成・執筆