月宮よしと「首」(200円)



「戦国時代。信濃国(現在の長野県)。
 裾花村に住む百姓の息子、作太郎は、不当な年貢の取り立てに加え、両親を侍に殺されたことから、侍になる決意をする。
 村を出る前に、恋人のお咲に別れ話をするが、捨てないでと縋りつかれ、振り払ったところ、お咲は死んでしまう。
 毒を食らわば皿までとばかり、強欲な庄屋の金兵衛を殺して、金を奪った後、彼は小諸(こもろ)へ行き、仙石兵部大輔家政の足軽に雇われる。
 家政と、戸倉一帯を治めていた保科蔵之助正盛との千曲川原の戦いで、作太郎は大奮闘し、十数個もの首をとる。
 これにより、彼は足軽頭へと出世。
 次いで、穂高の豪族、戸郷高敦との戦いでは、足立孫四郎との一騎打ちの際、高敦を背後から襲って殺す。
 更に、戦の後、わざと違う道を選び、自分の上官である足立孫四郎と荒城李兵を殺害、手柄を独り占めする。
 こうして、作太郎は五百石どりの武士となり、名を小栗十蔵と改める。
 その後も豪勇と奸智をもって幾多の戦場で功を成し、数年後には禄高千石の仙石家の重臣におさまる。
 また、彼に、北国の豪勇、最上家の綾乃との縁談がもたらされ、彼は大名の血縁者を妻にできたことに有頂天。
 綾乃を迎え入れ、しばらくは平穏な日々が続いたものの、二か月後、首にできた吹き出物が原因で高熱を出し、床に臥す身となる。
 一週間経った頃、熱も引き、快方に向かうが、ある夜、綾乃は奇怪な声を聞く。
 その声は彼の首にできた人面疽から出たもので、それは庄屋の金兵衛の顔であった。
 彼は綾乃にその人面疽を切り取らせるが、人面疽は次々と彼の身体にある向こう傷から現れ、彼の非道な所業を明らかにしていく…」

 典型的な「人面疽」ものに、派手なスプラッター描写を盛り込んで、面白いです。
 良作でしょう。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり、その上にまたビニールカバー貼り付け。糸綴あり。本文、シミ・汚れ多し(pp78〜81が特にひどい)。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2021年6月26日 ページ作成・執筆

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