月宮よしと「緋牡丹鬼」(150円)



「永禄十六年(注1)五月。
 因州月影城城主、坂部備前守光義は、隣国の暁城、俣岐右馬之助(またき・うまのすけ)を攻める。
 圧倒的な兵力の差により、暁城は落城し、右馬之助と妻、荻の方は裏山に退去する。
 だが、二人は、伏兵により生け捕りにされ、光義の前に引き出される。
 光義は、荻の方の懐刀に目を付けるが、それは家宝の守り刀、緋牡丹丸であった。
 この刀でもって、光義は右馬之助を殺害し、荻の方を自分の妻とする。
 この時点で、荻の方は既に身籠っており、その後、男児を出産する。
 驚くべきことに、男児の右腕には緋牡丹の痣(アザ)があった。
 光義は、今後の禍根となると、赤ん坊を殺そうとするも、赤子を殺すのは忍びない。
 そこで、腹心の部下に赤子を梟谷に捨てさせ、狼の餌食にさせようとする。
 その部下が梟谷に向かう途中、彼は、六造御堂六左エ門という盗賊に出会う。
 六左エ門は、光義に土地を奪われ、盗賊をしながら、復讐の機会を待っていた。
 六左エ門は光義の部下を斬り、荷物を開けると、中身は何と赤ん坊。
 仕方なく、彼は赤ん坊を連れて帰り、育てることにする。
 十五年後、赤ん坊は梅太郎と名付けられ、立派な青年に育っていた。
 六左エ門は光義に戦いを挑む前に、彼を恩師、珍無道人へと預ける。
 周防の国、羅漢山にて、梅太郎は珍無道人から剣の修行を受け、道人の旅行中に、瑞雲の剣(舞い散る羽毛を斬る剣)を会得する。
 そんなある日、梅太郎は三人の刺客に襲われる。
 刺客は光義が差し向けたもので、六左エ門の襲撃により、梅太郎の存在が知られたのであった。
 また、梅太郎は、自分の出生の秘密、また、六左エ門が戦死したことを聞く。
 彼は、自分の父、そして、義父の仇である光義への復讐に燃えるが、彼の前に、天童一角という剣鬼が立ちはだかる…」

 もとの話があるのでしょうが、それにモーパッサンの名編「手」がムリヤリ捩じ込まれており、どこかチグハグな感があります。
 時代怪奇ものを描き始めた、かなり初期の作品ではないでしょうか?

・注1
 調べたら、永禄は1558年〜1570年で、十三年しかない…。永禄六年の誤りか?

・備考
 カバーに若干の痛み。糸綴じの穴あり。前後の見開きに貸本店のスタンプ押印。

2020年2月25日 ページ作成・執筆

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