佐藤よしろう「鬼獣」(150円)



「川井博士の一人息子の川井健一。
 何者かに導かれるように、彼は小島博士、西田博士、川崎博士を順番に訪ねる。
 これらの博士は四年前に彼に手術を施した医者であった。
 そして、健一が滞在している間に、医者は何者かに惨殺されてしまう。
 実は、健一が犯人であった。
 健一は産まれた時から、とても人間とは思えないほどの片端者であり、地下室にずっと監禁されて過ごす。
 それを不憫に思った父親は彼を真人間にするための手術を決意。
 博士はボクサー、マラソンランナー、俳優を誘拐し、小島・西田・川崎の三人の医者の協力を得て、その両腕、両足、頭(まるごとそっくり!!)を健一に移植する。
 手術は成功したが、四年後、殺された三人の怨念が健一に憑りつき、復讐を開始する。
 川井博士に仕えていた下男(表紙に描かれている男)は健一を止めようと後を追うが、復讐の手は川井博士にも伸びる…」

 たくさんの著作を残しながら、漫画史にはちっとも名の刻まれていない(気のする)佐藤よしろう先生。
 ただ、怪奇マンガに関しましては、幾つか見どころのある作品を残しておられます。(他のジャンルのマンガに関しては、私の興味の範囲外です。)
 この「鬼獣」は初期の作品だと思いますが、ぶっちゃけ、後期の作品よりも遥かに面白いです。
 ストーリーは「バスケットケース」を彷彿されるもので、主人公はもと・片端(カタワ)という非常に危険な設定。
 しかも、復讐方法はそれぞれ両手・両足・首を切断という非常に残虐なもので、その他にもパワフルかつロウな残酷描写てんこ盛りです。(当時としてはかなり過激だったのでは?)

 とにもかくにも、作者の若さ故か、作品のパワーが尋常でありません。
 未熟な絵や荒唐無稽なストーリー、ヘンテコな設定等、いくらでも突っ込みはできますが、それを超えて、溢れんばかりのバイタリティーが、今のしゃくし定規なマンガと較べたら、新鮮に感じられるかもしれません。
 個人的には、とっても楽しいマンガでありました。(私の感性はちっとも当てにはなりませんので、あしからず。)

 ちなみに、最後には、えんどう晴也・文/菅家卓也・絵「怪談と幽霊の話」というのが載ってます。
 第一話は、東京池袋にある四面塔の祟りの話、第二話は戦後、メチルアルコール中毒で死んだ夫の霊が現れた話です。
 時代を感じさせます。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバーの背表紙に色褪せあり。袖、切り取りあり。pp39・40、上部隅に大き目の欠損あり。後ろの遊び紙に貸出票剥がし痕あり。

2016年11月11日 ページ作成・執筆
 

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