杉戸光史「怪談無明狂い」(220円/1968年4月頃完成)



「飛鳥は交通事故で視力を失う。
 ある日、彼女の耳に、「天使」を名乗る者の声が聞こえる。
 彼は、彼女の眼を治すために「遠くて近い世界」からやって来たと話す。
 薬によって、彼女の視力が回復するにつれ、美青年の姿が目に映る。
 それは夢であったが、実際に彼女の眼は見えるようになっていた。
 すると、彼女の部屋に、夢の青年が現れ、自分の館で腕の治療をするように勧める。
 青年に導かれるまま、飛鳥が霧の中を進んでいくと、彼の邸に辿り着く。
 彼女は邸の一室で療養するが、犬吉という使用人に監視され、部屋からは出せてもらえない。
 更に、謎の悲鳴がどこからか何度も聞こえ、謎の女が彼女をつけ狙う。
 飛鳥はいつしか青年を愛するようになるものの、両親のことが気になって仕方がない。
 そんな時、監禁されていた、青年の兄、一郎が部屋から脱出し、全ての秘密が明らかになる。
 この邸の住人の正体とは…?」

 作者によると、この作品は「擬人化け物のスリラー」とのことです。
 趣向としては、杉戸光史「私を殺す銀の糸」(貸本/ひばり書房)と一緒です。
 ただ、こちらは少女漫画的で気恥ずかしいほどにリリカルです。
 でも、太陽プロの作家らしく、ラストは登場人物全員で殺し合いになっております。
 そして、後記では、ペットに愛情を持って接するよう、作者からのメッセージ。
 この「感動」と「悪趣味」をごちゃまぜにする感性が、私は好きです。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。pp69〜73、目立つ汚れあり。後ろの見開きに貸本屋の紙の貼り付けやスタンプ押印あり。

2019年6月9日 ページ作成・執筆

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