月宮よしと「まぼろしの女」(200円)
「天正二年(1574年)。
美濃の国(岐阜県南部)。夏の昼下がり。
江馬惠四郎の母親が使いから戻った時、家から、息子の惠四郎の首を持った女が走り去るのを目撃する。
慌てて、家に入ると、当の惠四郎は家におり、今まで昼寝をしていたと言う。
だが、彼は、女に寝首を掻かれるという夢を見ていたのであった。
話は変わって、その頃、美濃の国は、徳永佐馬助義重と宇津木兵衛政信の二人の大名により二分されていた。
ある日、徳永より使者が宇津木に来て、和睦のために、宇津木兵衛政信の息女、沙桐姫を、義重の嫡子、義俊に迎えたいと伝える。
義俊は病弱で、政信はこれを機に勢力を伸ばすことができると考え、沙桐姫が拒否するにも関わらず、輿入れさせる。
しばらくは平穏な日が続いたものの、義重の見舞いに来た政信を、義重がだまし討ちにし、そのまま、宇津木の城を攻め滅ぼす。
沙桐姫は、父の仇である徳永家にはおれないと、止める義俊に重傷を負わせ、城から逃走を図る。
姫が向かおうとする先は、幼少の頃の姫を可愛がってくれた菅沼大膳の岩村城であった。
徳永家の忠臣、江馬惠四郎は、下手に止め立てすると姫が自害する恐れがあると考え、岩村城への護衛を買って出る。
途中、野盗に襲われ、左腕を失うも、二人は岩村城へ到着。
姫は菅沼大膳に匿われ、惠四郎も、敵方の侍でありながら、姫の守護として自由を与えられる。
惠四郎はいずれ姫を徳永家に連れ戻すつもりであったが、義俊はそれを知らされず、惠四郎の母と妹を鋸挽きに刑にする。
また、菅沼大膳の息子、周二郎が沙桐姫に惚れて、腕づくで嫁にしようとする。
それを止めに入った惠四郎は岩牢へと閉じ込められるが、そこで彼は姫への想いに気付かされる。
そして、また、沙桐姫も…。
夏の昼下がりの幻の意味する運命とは…?」
ミステリアスな怪奇譚で、悲恋の要素があり、異色作だと思います。
ただ、一番印象に残るのは、鋸挽きにされて、転がっている生首だったりしますが…。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。カバーの後ろ側下部に欠損あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2021年3月6日 ページ作成・執筆