大竹まなぶ「皮」(220円/1966年8月10日完成)

「城山皓介が院長を勤める城山病院。
 この病院には、先代の院長の時から今の院長にまで続く、ミステリーがあった。
 それは時折、死体安置所の死体から肉の一部が切り取られ、持ち去られるというもの。
 ある夜、若い医師、芦田文は先輩と共に、その死体を目の当たりにする。
 しかし、院長から厳しく口外を禁じられ、この不祥事の隠蔽に対し、芦田医師は良心の呵責に悩む。
 そんな時、妙に羽振りのいい医長に芦田医師は飲みに誘われる。
 飲み屋で、病院のミステリーの話になるが、医長はその話を聞いても、平然としており、芦田医師は訝しく思う。
 また、喫茶店で院長と医長が同席している場面も目撃し、芦田医師の疑惑は高まるが、医長は突然、失踪してしまう。
 そこへ、院長の娘の誕生パーティが開かれることとなり、芦田医師も弟と共に招かれていた。
 芦田医師はこれを機に、院長に相談するつもりでいると、パーティの途中、院長はこっそり場を外し、車で外出する。
 怪しんだ芦田医師がタクシーで後を追うと、院長の目的地は病院であった。
 病院の死体安置所で、芦田医師が見たものは…?
 そして、病院のミステリーの正体が解き明かされる…」

 大山まなぶ先生による初めてのスリラーもので、内容はかなりいいと思います。
 ただし、「ミステリー」や「サスペンス」としては平均点でしょうが、「ホラー」としては残念な出来です。
 ネタばれいたしますと、「戦争中、人肉の味を覚えた元・院長の老人に、死体安置所の死体の肉を院長が切り取って、与えていた」というストーリー。
 んで、いくらでも面白くなりそうな内容なのに、描写が終始控えめなんですよ、これが…。(注1)
 ラストは、史上最悪の喰人映画の一つ「猟奇!喰人鬼の島」(伊/1980年/ジョー・ダマート監督)(注2)のラストを先取りしており、「スゲーッ」と感心するのも束の間、、あまりにも「地味」な描写で、心が萎えてしまいます。
 恐らく、大竹まなぶ先生には、ショック描写に重点を置くよりは、全体的な完成度により重きを置いたのでしょう。
 ただ 怪奇マンガ・ファンの一意見を言わせてもらえば、スリラーをやるからには、ショック描写をこちらの脳髄に叩き込もうというガッツが欲しいものです。
 とは言うものの、池川伸治先生の作品に代表されるような、そのガッツが暴走し過ぎて、構成やストーリーがムチャクチャになっている作品も多々あるわけでして、なかなか「中庸」というものは得難いものであるというのが、今回、このマンガから得た教訓でありました。

 ちなみに、何らかの貸本マンガの研究誌の表紙で、このマンガの表紙のイラストが使われているものがあった記憶があります。
 未入手ですので、何故表紙に使われているのかは謎です。

・注1
 タイトルが本来は「肉」がふさわしいのに、「皮」になっている理由は、恐らく、前作「ヘルプ」の次回予告にて「皮」と紹介したからでしょうね。

・注2
 この映画で喰人鬼を演じたジョージ・イーストマンが、今度は謎の殺人鬼に扮し、血の雨をドシャ降らす続編(?)「Rosso Sangre」(aka「absurd」)、DVD化を希望しております。

・備考
 ビニールカバー貼りつき。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2016年10月1日 ページ作成・執筆
 

東京トップ社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る