東田健二「怪談濡れた幽霊」(150円)



「天文十九年(1550年)五月十二日。
 南郷新次郎の兄は奇病に苦しめられる。
 それは、心臓の鼓動が止まったかと思えば、動き出すという謎の病気であった。
 新次郎は姉の菊江を迎えに五亀城に向かう途中で、馬に乗った菊江と出会う。
 彼女は、城主の高嶺から、高嶺の妻の命日(五月十三日)に墓参を頼まれ、兄が病気で臥しているにも関わらず、殿の命を優先し、立ち去る。
 実は、墓参というのは偽りで、真の目的は、笛師の悠斉が完成された横笛を取りに行くことであった。
 この横笛は悠斉が千日もの間、祈願したもので、降魔利天像(こまりてんぞう)の霊が込められていた。
 高嶺がこの笛を求めた理由は、彼の妻が、心臓の鼓動が一定しない奇病で亡くなり、また、娘の琴姫や家来の南郷もこれにかかり、何者かの呪いを疑ったからであった。
 金を菊江から受け取り、悠斉の娘、お通は五亀城に笛を届けに行く。
 一方、新次郎の家に菊江が帰って来るが、いつの間にか姿を消し、菊江の馬の鞍には血が付いていた。
 その時、彼は、頭の後ろの風車を付けた忍者に襲われる。
 どうにか撃退した後、菊江の後を追うと、それはお通で、彼女から菊江が幽霊であることを知らされる。
 菊江の幽霊は御登木峠で彼を待つと、使用人の奇平に言付け、新次郎はそこに向かうのだが…。
 菊江は果たして幽霊なのであろうか…?
 そして、高嶺の一族を呪う者達の正体は…?」

 東田健二先生の貸本作品に共通することのように思えますが、非常にわかりにくいです。
 場面展開が急なことに加え、セリフをなるべく控えているため、状況を把握できないことが多々あります。(全てセリフで説明するのも問題ありますが…。)
 と、ただでさえ、わかりにくいのに、この作品、結末に、あっと驚く大どんでん返しがあるのです。
 見せ方のツボを押さえていれば、(多少の無理があっても)新鮮な驚きがあったのでしょうが、最初、何のことやら全く理解ができませんでした…。
 何度か読んで、ようやく意味はわかったものの、読み返すうちに、「意外さ」よりも「粗」の方が目につくこととなってしまいました。
 と言うか、ラストに意外性を持たせたのは構いませんが、それだと納得できない場面が所々あるんですけど…。(二か所に同一人物がいたりとか。)
 あと、タイトルが「濡れた幽霊」なのに、濡れてないぞ…。
 まあ、漫画が発展途上にある時期の作品なので、多少の不出来には目をつぶって、作者の若いパワーを感じるべきでしょう。
 余談ですが、笛師の娘、お通がなかなかいいです。(中央の画像で、笛を吹いている娘。)

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバー貼り付け、かつ、痛み(特に、背表紙の下部)。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕、スタンプ、書き込みあり。

2022年6月11・12日 ページ作成・執筆

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